信州大学など研究グループは、光を自在に操るハイブリッドナノシートを合成するための普遍的なモジュール型戦略を確立し、ナノシートの自己組織化によって光の吸収・反射・発光という三つの発色原理を統合した多機能フォトニック結晶を実現した。さらに、フォトニック構造の三次元可視化とフォトニック結晶の光学機能の動的制御にも成功した(ニュースリリース)。

フォトニック結晶は、数百nm程度の周期的なナノ構造によって特定の波長の光を選択的に反射し、構造色を示す材料。構造色は色素や顔料による発色とは異なり、色の調整可能性、耐褪色性、環境調和性などの特徴を持つことから、センサー、ディスプレイ、偽造防止技術、次世代インク・色材などへの応用が期待されている。
なかでも無機ナノシートは、固有の二次元性と刺激応答性を持つことから、フォトニック結晶を構成するナノユニットとして注目されている。一方で、ナノシート固有の性質やフォトニック結晶の形成能力を維持したまま、追加機能を付与することは難しかった。
研究グループは今回、フォトニック結晶を構築可能な酸化チタンナノシートを基盤とし、その表面に機能性ナノ粒子を修飾する手法を開発した。表面が負に帯電した酸化チタンナノシートに、正に帯電した機能性ナノ粒子を徐々に加えることで、静電引力を利用してハイブリッド化した。この手法により、金ナノ粒子、金ナノロッド、蛍光シリカナノ粒子を用いた場合でも、構造的・コロイド的に安定し、各ナノ粒子のプラズモン特性や蛍光特性を保持したハイブリッドナノシートの合成に成功した。


さらに、得られたハイブリッドナノシート間に働く静電斥力を強めることで、ナノシート間距離を数百nmに拡大し、自己組織化による多機能フォトニック結晶を作製した。この結晶では、プラズモン吸収、構造色、蛍光という三つの発色原理を統合できることを示した。
また、強磁場を印加してナノシートの向きを制御することで、構造色のオン・オフを可逆的に切り替えることにも成功した。加えて、金ナノ粒子の光熱変換効果を利用し、光照射によって構造色を制御できることも実証した。
研究グループは、蛍光シリカナノ粒子を修飾した蛍光性ハイブリッドナノシートを用いることで、水中に分散したナノシートの運動をリアルタイムで可視化した。さらに、共焦点レーザー顕微鏡により、フォトニック結晶を形成する個々のナノシートをウェット状態で三次元的に直接可視化することにも成功した。

この成果は、電子顕微鏡観察で必要となる構造固定や乾燥操作を伴わず、ナノシートの自己組織化構造や動的挙動を解析できる新たな基盤技術になるという。
研究グループは、このモジュール型戦略により、複数機能の統合と光学機能の精密設計が可能になるとしており、創発的な光機能を示す新規色材・インクや、次世代スマートフォトニックマテリアルの創出につながることが期待されている。



