光科学技術研究振興財団は,独自に独創的な研究業績をあげ日本の光科学の基礎研究や光科学技術の発展に貢献したと認められる研究者を顕彰する「第7回 晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者および「令和6年度研究助成」の採択者を決定したと発表した(ニュースリリース)。
同財団は,光科学技術の高度化に寄与するため,同財団の設立発起人で浜松ホトニクスの創業者の一人でもある晝馬輝夫氏の功績を記念した「晝馬輝夫 光科学賞」により秀でた研究者を顕彰するとともに、募集テーマに沿った研究に資金を助成する「研究助成事業」を行なっている。
今回,10名の候補者の中から,岡山大学教授の菅倫寛を「第7回晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者に決定した。授賞理由となる研究業績は「光合成に関わる水分解・酸素発生触媒の構造と機能の研究」。
同氏は,光合成の過程で水を分解して酸素を発生させる光化学系II と呼ばれる巨大な分子群に注目し,その中で展開される時間的・空間的な機能と働きを独自の計測・解析法で調べ,その解明に大きく貢献した。
同氏の研究では,X線自由電子レーザーから得られるフェムト秒オーダーのX線パルスを用いることにより,光化学系IIの分子構造の動的変化を,X線照射に伴う分子構造の損傷の影響を避けつつ,スナップショットのように捉えられることを示した。そして,光合成中の光化学系II において水分子が光エネルギーにより分解され酸素が放出される様子が,時空間的に明らかにした。
この研究は,太陽光を用いて水から水素を得るクリーンエネルギー技術の進展に資するものであり,また,同氏が確立したX線自由電子レーザーを用いた分子構造のダイナミクスの計測法は,今後の生命科学の進展に大きく貢献することも期待されるとする。
以上のことから,同財団は,同氏の業績が若手研究者を顕彰する「晝馬輝夫 光科学賞」に相応しいと判断し,その授与を決定したという。また「令和6年度研究助成」の入選者31名も決定した。なお贈呈式は,令和7年3月4 日(火),ホテルクラウンパレス浜松にて開催される。