日本学士院は2026年3月12日、第1197回総会において、学術上の功績が顕著な科学者を顕彰する「日本学士院賞」を決定した。今回の受賞者には、光技術およびマイクロシステム分野において革新的な業績を挙げた、東京科学大学(旧東京工業大学)栄誉教授の伊賀健一氏、同大学特任教授の小山二三夫氏、ならびに東北大学名誉教授の江刺正喜氏が含まれている(ニュースリリース)。


伊賀健一氏と小山二三夫氏の両名は、「垂直共振器型面発光レーザの実現・性能向上と応用展開」に関する共同研究の成果により受賞した。伊賀氏は1977年に、半導体基板の表面に対して垂直に光を出射する「面発光レーザ(VCSEL)」を着想・命名し、1979年に低温での動作を実現した。その後、小山氏との共同研究によって1988年に室温での連続発振に成功したことで、この技術は実用化に向けた大きな転換点を迎えた。面発光レーザは、従来の端面発光型レーザと比較して低消費電力かつ二次元的なアレー化が容易であるという特性を持ち、現在ではデータセンターの高速光通信、スマートフォンの顔認証、さらには自動運転等に用いられる光レーダ(LiDAR)など、高度情報化社会を支える不可欠なデバイスとして世界中で普及している。

また、江刺正喜氏は「微小電気機械システム(MEMS)の研究開発と実用化」における功績が評価された。江刺氏は、半導体微細加工技術を応用して小形で高度な機能を持つ部品を製作する「MEMS」分野の先駆者であり、基礎研究から産業化に至るまで一貫して牽引役を務めてきた。同氏は、低侵襲医療に用いられる半導体イオンセンサや、自動車・家電等に広く活用されている集積化容量型圧力センサ、さらには光スキャナや静電浮上回転ジャイロなど、多岐にわたるデバイスの実用化を主導した。また、東北大学において企業の研究者がMEMSを試作できる「試作コインランドリ」を整備するなど、オープンイノベーションの基盤を構築し、学術と産業の融合に多大な貢献を果たしている。
今回の受賞は、日本の光技術および電子工学が世界最高水準にあることを改めて示すものであり、これらの技術が医療、通信、自動車、環境など広範な分野で社会の安全・安心や利便性向上に寄与していることが高く評価された結果といえる。



