慶大ら,老化を可視化できるラマン顕微鏡法を開発

慶應義塾大学,愛知医科大学,筑波大学は,ラマン散乱を用いて,細胞の老化を標識物質なしで可視化する顕微観察方法を開発した(ニュースリリース)。

細胞の老化は老化現象の元となるだけでなく,癌をはじめとしたさまざまな加齢性疾患にも関与するため,老化細胞を標識物質なしに可視化したりその程度を評価したりすることは重要となる。

今回の研究の技術要素の1つは,CARSと呼ばれる光学過程を検出できる顕微鏡を用いた画像化法(CARS画像化法)。CARSはラマン散乱を「高感度に」観察可能にする。また実験に用いるヒト正常細胞には化合物を用いた「最新の初代培養法」を用い,老化を抑えながら長期的に増殖させることで,実験精度を向上させた。

実験では,まずヒト正常細胞を薬剤で強制的に2核化し,人工的に老化させた細胞を作成した。その老化を老化マーカーで確認し,白色レーザーを照射してそのラマン散乱を観測したところ,核小体におけるアミドI バンドのピークが高い波数(>1653cm-1)にシフトしていることを発見した。

このシフトはβシートの増加を反映することが先行研究から知られている。そこでこの老化細胞核小体におけるβシート増加の原因をアミロイド染色試薬で確認したところ,アミロイド様凝集体の存在を確認した。

最終的に核小体の波数シフトが見られる領域を青色で画像化し,老化細胞特異的に核小体を可視化できた。自然発生した2核老化細胞や,試薬でアミロイドを形成させた細胞でも可視化の再現性を確認した。

最後にこのβシート検出能を使って,2核老化になる前の核小体の状態評価を検討した。正常細胞の自然経過では,2核老化以前にも核小体の肥大などの老化の兆候が見られる。

これらの1核細胞のアミドI シフトを画像化したところ,核小体の大きさとβシートの比率に相関が確認できた。すなわち,新開発のCARS画像化法では,βシートの比率によって2核化以前の核小体の健全性の程度も評価することができる。

以上のことから,この方法は細胞老化の非染色検出だけでなく,小さな核小体の健全性の評価も可能なことがわかった。

研究グループはこの技術について,同様にアミロイドに基づいた生理・病態の研究や医療開発に幅広く寄与することが期待されるとしている。

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