東大ら,小型・堅牢な超高精度光格子時計を開発

東京大学,理化学研究所,島津製作所,日本電子は,装置容量250リットルの小型・堅牢な超高精度光格子時計の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

2020年に東京大学と島津製作所は,東京スカイツリーの地上階(0m)と天望回廊(450m)に設置した装置体積920リットル,18桁精度の2台の光格子時計の時間の進み方の違いを測定し,設置場所の標高差と比較することで,一般相対性理論の実証実験を実施した。光格子時計の可搬化と実験室外での実証は,光格子時計の周波数測定による標高差・重力ポテンシャル計測システム確立への第一歩となった。

一方,光格子時計を将来の社会基盤として用いるためには,さらなる装置の小型化が望まれている。また,長期間,連続で安定して運用できるようにすることも必要となる。

研究グループは,JST 未来社会創造事業で「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」の研究開発に取り組んできた。その成果として,原子の時計遷移を分光するための物理パッケージや,原子のトラップと分光を制御するためのレーザー/制御システムをそれぞれ小型化した。

物理パッケージは,東京大学,理化学研究所,日本電子が共同で開発した。高精度な光格子時計に必須である,空間的な均一磁場を発生させるためのコイルや黒体輻射シールドを真空槽に組み込むことで,大幅な小型化,高精度化を実現した。

レーザー/制御システムは,東京大学,理化学研究所,島津製作所が共同で開発した。レーザー溶接手法によって光軸の調整機構が不要となった光学系,その水冷とヒートパイプを利用した熱的な安定化,高密度に最適実装した制御回路によって,従来よりも小型かつ堅牢で,長期運用可能なシステムを実現した。

さらに,各機能は,機能ごとに分割した交換可能なモジュール構成として設計することで,運用時の保守性も高めた。研究グループは,これらの研究開発成果を装置開発に集約し,装置体積250リットルの超高精度光格子時計装置の開発に世界で初めて成功した。

光格子時計の小型化で移設が容易になったことにより,さまざまな設置環境にて一般相対性理論を利用した相対論的センシングに応用できる。例えば,数センチメートル精度のプレート運動や火山活動による地殻の上下変動の監視や,数時間から数年かけて起こる地殻変動(標高変化)の精密な観測,超高精度な標高差計測・測位システムの確立など,研究グループは,光格子時計が将来の社会基盤として,多様な研究現場・用途目的にも貢献することが期待されるとしている。

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