ペロブスカイト太陽電池事業化の将来展望を明らかに

矢野経済研究所は,ペロブスカイト太陽電池(PSC)及びその部材の国内市場を調査し,参入企業の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

それによると,ペロブスカイト太陽電池(PSC)は,既存の結晶シリコン太陽電池(結晶Si太陽電池)に比べて,製造プロセスでの環境負荷が少なく,材料・部材の国内調達が可能,軽く柔軟で高効率という点から次世代太陽電池として有力視されている。

資源エネルギー庁の「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」ではPSCの導入拡大に向けて,”2030年を待たずにギガワット(GW)級の量産体制構築を前提に検討”という方針が打ち出されている。

一方,PSCメーカーの量産開始時期は早いところで2028~2029年頃になる見込みで,2030年にGW級の発電容量を確保するには現状ではハードルが高い。PSCは,まずは公共施設,公共住宅などでの試験的な設置が中心となると考えられることから,2030年度の太陽光発電新規導入容量に占めるPSCによる新規導入容量の構成比が1%前後からのスタートになると予測した。

その後,工場や倉庫など重量制限のある建物の屋根やビル外壁などの垂直面でのPSC活用が進むと考えられ,2040年度には1.5GWのPSCによる新規導入容量(構成比19.5%)が確保される見通しだという。

この予測数値は国が推進する「2030年にGW級」という目標と比較すると,かなり控えめな数字にも見えるが,発電容量確保を優先して既存の太陽電池からPSCへの置き換えを進めても,結晶Si太陽電池や海外生産されたPSCとの価格競争となり,利益の確保は難しいと考えられる。

高付加価値産業としてPSCを育てていくのであれば,今後数年でGW級という規模を優先した拡大策ではなく,既存の結晶Si太陽電池にはないPSCならではの用途・市場を開拓する必要があると考えた。

従来の太陽光発電事業では,大規模発電設備(メガソーラー)で発電した電力を電力会社に売って収益化するという展開であった。しかし,日本国内では既に平地への太陽光パネルの設置が行きわたり,新たな土地も少なくなってきた。

今後求められるのは,都市部に小規模のパネルを設置し,ビルや商業施設などが使用する電力を自ら発電するという自家消費型発電(電力の地産地消)であり,日本勢(太陽電池・部材メーカーなど)が開発に取り組む軽量でフレキシブルなフィルム型PSCの優位性はここで発揮されるという。

基材に発電層,電荷輸送層を「塗って作る」という,フィルム型PSCの製法も日本勢の強みにつながっている。PSCは基材にペロブスカイト層や電荷輸送層をコーティングにより形成するため,塗布・乾燥の成膜過程の制御技術がPSCの品質・デバイス特性を決めるキーポイントであり,そのための塗液の配合や,塗液・基材・塗工設備との組み合わせ,乾燥条件の最適化は,日本勢が得意とするフィルムコンバーティングの技術そのものだとしている。

フィルムコンバーティングの技術を活かして,結晶Si太陽電池の置き換えではないフレキシブルかつ高付加価値なフィルム型PSCの市場を確立することが出来れば,将来的に海外製の安価なPSCが入ってきたとしても,それらとは敢えて戦うことなく独自の需要の確保が可能である。

​また,ガラス型PSCであってもガラス建材とPSCとを一体化して透過性・意匠性を持たせた発電機能付きのガラス建材とするなど,少量多品種対応を進めることで海外勢と差別化した日本独自の高付加価値展開とすることが可能になると考えた。

将来展望としては,結晶Si太陽電池によるメガソーラーとは異なり,設置可能な土地の少ない都市部で建物の垂直面など限られたスペースに設置されるPSCで発電容量を確保するには,より多くの場所への設置が求められる。

国がGW級の発電容量の確保を本気で考えるのであれば,まずはモデルケースとして役所や学校,防災施設,公営住宅などの公共施設に率先してPSC設置を進めていくための措置が必要であり,PSCの設置を進める地方自治体に対する補助金交付などの喚起策なども考えられるという。

PSCメーカーと国や自治体などが連携して実績を確保し,PSC設置数が増えれば規模の効果で製造コストが下がり,民間施設での採用につながるというスパイラルが期待できる。PSCの導入ボリュームが見込めるのであれば,PSC部材メーカーにおいても新たな設備投資による生産能力の拡大や生産技術のブレークスルーにつながる新たな技術開発などが期待される。最終的には,PSC部材コストが下がることで普及に向けたボトルネックも解消するとしている。

こうしたシナリオを実現するためにも,NEDOの「グリーンイノベーション基金」による実証事業などによるPSCの技術開発へのバックアップだけにとどまらず,国や自治体,企業との連携による官民一体での需要開拓の取り組みが求められているという。

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