阪大ら,緑色光を発電に用いる有機太陽電池を開発

大阪大学,諏訪東京理科大学,石原産業,デザインソーラーは,農作物の生育に必要な青色光と赤色光を透過し,光合成への寄与が少ない緑色光を発電に用いる緑色光波長選択型有機太陽電池(OSC)の高性能化に成功した(ニュースリリース)。

国内農業のエネルギーは,重油等で約94%を占める化石燃料漬けの状況。この現状を打開するためには,再生可能エネルギーを活用したエネルギーシステムの構築が不可欠となっている。

一方で,食料安全保障の観点では,地域紛争による農作物輸入リスクや災害による食料需給の不安定要素が存在していることから,国内の農業生産の増大を図ることが急務であり,農作物の収穫量増加やスマート農業による生産性向上等,新たな農業システムの確立が求められれている。

太陽光を発電と農作物栽培の両方に利用する技術として,シリコン太陽電池を用いたソーラーシェアリングが挙げられる。しかし,ソーラーパネルは重量が大きく,設置用の架台設備等のスペースが必要なことに加えて,太陽光パネル自体が日陰を作ることによる周辺の農作物への悪影響も懸念されている。これらの点から,ソーラーシェアリングの農業用ハウスへの利用は適材適所とは言えない状況となっている。

シリコン太陽電池と比べると,OSCは軽量性,柔軟性の特徴を有することから農業用ハウスへの搭載が比較的容易な太陽電池。OSCの発電層はドナー材料とアクセプター材料の二成分の混合薄膜で構成される。

高い発電効率を目指した通常のOSCでは,幅広い可視光領域の光吸収が不可欠であるため,異なる大きさのエネルギーギャップ(Eg)をもつドナー材料とアクセプター材料を組み合わせることが一般的な設計指針となっている。

これに対して,緑色光波長選択性を得るためには,約2.00-2.50eV程度,かつ,同じ大きさのEgをもつドナー材料とアクセプター材料の組み合わせが必要となる。

今回研究グループは,緑色波長選択的な吸収を示す安価なドナー材料のポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)と緑色光波長選択的なアクセプター材料(FNTz-FA)を組み合わせることで,緑色光波長選択型OSCの高性能化を実現した。

さらに,イチゴを用いた光合成速度評価やトマトを使った予備的な農業評価で,緑色光波長選択型OSCの農業用途の可能性が期待できる結果を得たという。

研究グループは,青色と赤色光を農業,緑色光および近赤外光を発電に用いるソーラーマッチングに基づく波長選択型OSCにより,農作物生育に悪影響を与えることなく農業用ハウスに電力を供給できる,エネルギー地産地消の新しい営農型太陽光発電技術の確立が期待されるとしている。

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