
富士キメラ総研は,ヒューマンエラーの防止や事故ゼロを目的に,2024年は自動車生産台数の約半数がレベル2の機能を搭載し,長期的にはレベル3以上の普及が予想される,自動運転車の世界市場を調査し,その結果を「2024年 自動運転・AIカー市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,自動運転車の生産台数は2024年にレベル2が4,513万台,レベル3が30万台と見込む。現在は,レベル3に対する法制度が進まない地域があることや事故時の責任所在の関係から,レベル2が主流。ただし,中国ではレベル3の生産が先行して進んでいるという。
自動車メーカーは,自動運転に関する法整備を含む将来的なインフラ整備を想定し,無線通信経由でデータを送受信してソフトウェアの更新などを行うOTA(Over The Air)によって自動運転レベルを上げられる車種の展開を増やしているため,今後はレベル3以上の普及が進むとみる。法整備の進展や自動運転技術の向上により2035年以降普及が本格化し,2045年には自動車生産台数の過半数がレベル3以上になると予想している。
自動運転車レベル3以上のエリア別生産台数をみると,中国での生産が先行している。中国では,中国工業情報省が2023年にICV(Intelligent Connected Vehicle)に関する長期的な戦略を発表し,2024年6月には,一定の条件下でレベル3の公道試験を自動車メーカーなど9社に承認した。
新興メーカーを含め,自動運転に関する装備を搭載した車両の展開が増えていることから,中国での生産が加速するとみている。
今後も,中国ではレベル3と4の搭載車両の走行試験を強化するとみており,市場拡大をけん引していくが,欧州や北米でも需要が増え,生産が増加すると予想する。日本では,OTAによるソフトウェアのアップデートでレベル3への移行が可能とみられる車両が販売されていることや,開発が進むレベル3のシステムが2025年頃から搭載されることなどから,徐々に伸長するとみている。
この調査では注目市場としてLiDARを取り上げた。レーザー光を周囲に照射し物体に当たり跳ね返ってくるまでの時間から物体の有無や距離,方向などを測定する製品で,高度な自動運転システムにおいて,リアルタイムに対向車や歩行者,障害物の存在を把握するために搭載される。
2024年は,前年比95.8%増の936億円を見込む。ロボットタクシーサービスの増加と中国でNoA(Navigation on Autopilot)と呼ばれる自動運転車が発売され,それらに搭載されたことから市場は急拡大しているという。
2025年以降は,日系や欧米系自動車メーカーによるレベル3以上の車両展開も予想する。レベル2では2個までの搭載が多いが,レベルが上がるにつれ,詳細な周辺環境データが必要になり搭載数は増加することから,引き続き市場は拡大するとみる。また,1個当たりの製品コストが高い点が課題であり,今後の対応が望まれるとしている。