2024年度人工光型植物工場運営市場規模は208億円

著者: 梅村 舞香

矢野経済研究所は,国内における完全人工光型植物工場運営市場を調査し,現況,参入企業の動向,および将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

それによると,2023年度の完全人工光型植物工場におけるレタス類の運営市場規模は,生産者出荷金額ベースで前年度比95.5%の210億円と推計した。2024年度は同99.0%の208億円となる見込みだとする。

完全人工光型植物工場の生産品目は90%以上がレタス類(フリルレタス,ロメインレタス,グリーンリーフ​等)とみられることから,今回の調査では栽培品目の大部分を占めるレタス類の出荷金額規模を算出した。

完全人工光型植物工場の撤退や再編の動きから2022年度,2023年度と供給量は減少傾向にあり,2024年度のレタス類の運営市場規模も大規模植物工場の生産停止が発表されたこともあり,微減の見込みだという。

一方で,近年は天候不順の激化により,露地野菜の調達相場が乱高下していることから,供給量と品質が一定である植物工場産野菜の需要は,業務用・小売用分野ともに拡大傾向にある。2025年度以降は,新たな大規模植物工場の稼働開始や既存工場の稼働率向上などから,運営市場規模は再び増加基調に転じる見込みだとする。

この調査で注目した植物工場運営事業者においては,電気代や人件費等のランニングコストの高騰が課題となっているが,「物流2024年問題」による貨物輸送量や運賃への影響も懸念されている。消費地から大きく離れた地方に立地する植物工場では,物流コストの上昇や運送便数の減少などの影響が出始めているという。

既に,地元卸売市場で荷下ろしした帰り便への混載・相乗り利用,常温輸送が可能ならば宅急便での配送への切り換え,販売先を工場の150km圏内に絞ることでのコスト削減,大株レタスを生産して積載効率を高める,植物工場内の加工施設で最終製品に加工して付加価値を付けて販売する等,さまざまな物流コストを抑制する対策が取られている。

将来展望については,近年,食品へのカエルや虫など異物混入のニュースが散見される中,食の安心・安全の面からも,異物混入のリスクの低い植物工場産野菜の引き合いは高まる傾向にある。さらに,加工工程で洗浄などにかかる手間を軽減できる点も評価されるポイントとなり,植物工場産野菜は今後の需要の伸びが期待できるという。

また,現在,完全人工光型植物工場の生産品目は,フリルレタスやロメインレタス,グリーンリーフなどレタス類が中心となっているが,今後はイチゴやバジルなどハーブ類への生産品目拡大の見込みだとする。その他,代替タンパク質用途としての大豆やメロン,稲等の新規品目についても,研究開発が進む見通しだとしている。

​今後,植物工場産野菜の需要は拡大傾向で推移する見込みであり,既存の完全人工光型植物工場の稼働率も高まる見通しであることから,市場は増加傾向で推移し,2028年度の完全人工光型植物工場におけるレタス類の運営市場規模は240億円になると予測した。

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