QSTら,元素比が崩れた結晶で高電子移動度を実証

量子科学技術研究開発機構(QST),大阪大学,京都大学は,元素比率1:1のヒ素化タンタル(TaAs)結晶が持つ極めて大きい電子移動度が,元素比率が6:4に大きく崩れたTaAs結晶においても保持されていることを見出した(ニュースリリース)。

研究グループは,この原因を究明するために,電子顕微鏡観察やX線結晶構造解析と組み合わせて,元素比率が6:4に大きく崩れたTaAs結晶の構造解析を行なった。その結果,電子顕微鏡観察やX線結晶構造解析ではきれいな結晶構造が形成されていることを示す結果が得られた。

一方で,原子レベルで分析が可能な陽電子分析法では格子上原子の欠損は,わずか10万箇所に1箇所しかないことがわかった。これは,余剰に存在するTa原子が,本来As原子が占める結晶格子の位置に収まる,アンチサイト欠陥の構造を取っていることを実験的に初めて示した成果。

この知見は,元素比率が揃わないTaAs結晶でも,結晶格子に原子の欠損がほとんどないアンチサイト欠陥の構造を取れば,元素比率が揃った結晶と同等の電子移動度(量子機能)が得られることを示しているという。

研究グループは,量子材料の元素比率を精密に制御することなく産業レベルでの大量生産を見据えた量子材料開発が期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 阪大ら,レーザーで中性子を生成し非破壊計測を実証 2024年07月16日
  • 東工大ら,非周期結晶構造を理論的に提唱 2024年07月16日
  • 東工大ら,結晶の光誘起構造変化ダイナミクスを解明 2024年06月11日
  • 理科大,電子移動過程を可視化するナノチューブ作製 2024年06月06日
  • 筑波大ら,入れ子状物質の光照射で電子の抜け道発見 2024年06月04日
  • 阪大ら,光誘起力顕微鏡で電子の歪を1nm以下で観察 2024年01月24日
  • 東大,シリコンの非晶質・非晶質転移の機構を解明 2024年01月17日
  • 名市大ら,2次元ダイヤモンド状コロイド結晶を作製 2024年01月16日