東大ら,分光法で界面水のクラスター構造を解析

東京大学,東京理科大学,高輝度光科学研究センター,北里大学,広島大学,長崎大学は,新しいタイプの多孔性結晶を創出し,その結晶に含まれる界面水が温度や界面からの距離に依存した動的挙動を示すことを明らかにした(ニュースリリース)。

生体分子や高分子材料の表面に存在する水分子は界面水と呼ばれ,さまざまな場面で重要な役割を担っている。そのため,界面水の性質,水素結合ネットワークおよび水クラスター構造を明らかにすることは重要。しかし,従来の分析手法では材料界面の水分子の情報は平均化されてしまい,原子レベルの分解能で詳細な構造情報を得ることは困難だった。

今回の研究では,性質の異なる2種類の分子素子を分子間相互作用で組み合わせることで,ナノ細孔を有する超分子結晶が得られた。

この結晶を水に浸漬させると,ナノ細孔内の溶媒分子が水分子に置換され,細孔構造を維持したまま1次元の水チャネルが形成した。SCXRDによる構造解析の結果,1次元水チャネルの界面に沿って,5量体を含む巨大な水クラスターが形成されている様子が観察された。

さらに測定温度を298Kから90Kの間で変化させながらの温度可変SCXRD解析により,細孔表面に形成した水クラスター構造は比較的秩序だった構造を維持していた一方で,界面の第二水和圏に相当するチャネル中央部の水分子は温度変化によって容易に構造再編成を示す,動的かつ高エントロピーな性質を持つことを明らかにした。

その後90Kから170K付近に昇温すると,第二水和圏の水分子の位置が変化し,周期構造をもつ水素結合ネットワークに変化した。

実験で観測された第二水和圏の界面水の動的な性質を補完するために,MDシミュレーションを行ない,水分子の拡散係数,水分子の四面体性および水素結合数を調べた。その結果,界面からの距離に応じた拡散性の違いや,バルク中の水分子とは異なる構造的特性が明確化された。

また結晶の脱水過程を大型放射光施設SPring-8における赤外分光法(IR)および放射光軟X線発光分光法(XES)測定によって追跡することで,材料界面から第二水和圏の水分子の分光スペクトルの測定に成功した。

スペクトルを解析したところ,細孔中央部の水分子は水素結合が弱く,水の四面体構造が欠損した状態のものが多いことがわかった。特にXESでは,第二水和圏の水分子はバルクの水分子に比べて水素結合に欠損を含む水分子を多く含むことを示す結果が得られた。

研究グループは,今回の結果は結晶性固体材料に対する新しい着眼点を提供するものであり,次世代固体材料の開発研究への貢献が期待できるとしている。

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