阪大ら,レーザー加速器で電子発生量の世界記録更新

著者: sugi

大阪大学,東海大学,スペインCLPUは,レーザー電子加速の技術開発を行ない,世界記録となる電子発生量を達成し,1時間の自動連続運転を可能とした。この電子から核反応を起こして中性子(1MeV以上,高速中性子)を発生し,レントゲン撮影である中性子ラジオグラフィに成功した(ニュースリリース)。

中性子発生には高エネルギー電子の発生が必要であり,これまでは主に加速器を用いて行なわれてきた。加速器は大量の電子を発生できるが,装置が大型であることや,パルス時間幅が長いことが問題だった。

レーザー加速器はパルス時間幅を極めて短く(25fs)でき,将来レーザー装置の小型化も期待される。一方で大量の電子を発生させることや,安定な繰り返し運転ができないことが問題だった。

研究ではレーザー加工とレーザー加速の技術を融合した。スペインのVEGA-IIレーザーと単純なステンレス円盤を用いて電子発生を行なった。VEGA-IIレーザーをステンレス円盤に連続的に照射し,1発目で穴あけ加工により電子加速に最適化されたターゲットを製造し,そのまま2発目のレーザーを照射すると,レーザーは自動的に穴の側壁に斜め入射で集光される。

切り立った穴の側壁の形状とレーザー集光条件がマッチし,プラズモニック加速メカニズムにより効率的に加速される。3発目の前に,穴の形状が崩れてしまったステンレス円盤を少し回転させて平坦なステンレス面にレーザーが当たるようにする。その後,さらに1発目(ターゲット製造)・2発目(電子加速)・ステンレス円盤回転(ターゲット交換),・・・を継続し,1時間以上自動運転を実現した。

この操作により効率的な電子発生が起こることを発見。電子の発生効率は従来方式から比べると9倍に増加し,同時に発生した中性子は4000倍に改善した。1パルスあたりの電子の総発生数は6.3×1011個(100ナノクーロン)に到達し,パルス幅がフェムト秒オーダーの電子発生としては世界記録を樹立した。

中性子の発生は,電子のエネルギーがある閾値を超えると急激に増加する。今回の実験では電子の数とエネルギーの両方が増大し,電子エネルギーと中性子発生が急激に増加する領域に達したことで,中性子発生量が4000倍まで増加した。

レーザー加速器の特徴である短パルス性を利用して,X線と中性子を時間弁別することに成功した。この中性子を用いたレントゲン撮像(中性子ラジオグラフィ)にも成功し,はじめてレーザー加速器により中性子ラジオグラフィができることを実証した。

研究グループは,金属の内側までも透視することができる小型中性子ラジオグラフィ装置により,老朽化したコンクリート橋やトンネルを,その場で非破壊検査できるとしている。

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