第5回多元プロ,高強度レーザーをテーマに開催

2018年度を締めくくる光産業技術振興協会・多元技術融合光プロセス研究会が『高強度レーザーの最前線』をテーマに3月5日,産業技術総合研究所・臨海副都心センター別館において開催された。

当日は代表幹事を務める理化学研究所・杉岡幸次氏の挨拶の後,講演に移った。最初に登壇したのは東京大学・渡辺俊太郎氏で『チャープパルス増幅法(CPA)によるMourou氏のノーベル賞受賞を祝して』と題し,講演を行なった。渡辺氏はMourou氏が東大物性研に滞在した際に研究を共に行なっており,当時のエピソードやMourou氏が発明したCPAの発展について語った。

続いて登壇したのは東京大学・芦原聡氏で,『中赤外チャープパルスによる分子振動励起と化学反応制御』をテーマに講演を行なった。講演では中赤外パルスの有用性について,分子振動モードを強く励起し,分子反応を誘起させるという物質制御ツールとしての側面を紹介した。

この後,古河電気工業・松下俊一氏が『パルス幅可変高ピークパワーパルスファイバーレーザーの開発』をテーマに講演。光ファイバー増幅器を活用したMOPA型パルスファイバーレーザーのパルス幅可変技術や高ピークパワー増幅技術の開発動向を解説した。

休憩後,スペクトロニクス・岡田穣治氏が『機能材料の微細加工に適したレーザー技術の開発とその事業化について』と題する講演を行なった。スマートフォンを始めとする電子機器は小型化が進み,従来の機械加工では対応が難しくなってきているのが現状とし,微細加工分野においてレーザーの適用が進んでいる。同社はここに着目し,ピコ秒レーザーを開発。講演ではその開発動向と事業の現状などについて述べた。

次に登壇したのは,実用技術研究室の松岡芳彦氏で,『レーザー加工に求められるレーザーとは?』をテーマに講演。現在,市販されているピコ秒・フェムト秒パルスレーザーのスペックシートを参考に,微細加工に適したレーザー発振器の特性を解説した。

最後は,会員からの話題提供に移り,理化学研究所・杉岡幸次氏が『フェムト秒レーザー3次元加工によるマイクロ流体SERSチップの開発』をテーマに講演を行なった。杉岡氏ら研究グループは,フェムト秒レーザーを用いて形成したナノドット周期構造がSERSセンサーとして機能し,ガラス基板上でのラマン散乱と比較して7.3×108倍のラマン散乱強度の増強が得られたとしたうえで,10ppbの検出感度で,異なる濃度のカドミウムイオンをリアルタイムで検出することに成功している。講演ではその研究開発を詳説した。

今回の研究会は,2018年のノーベル物理学賞を受賞したMourou氏の功績を称える内容で,同氏が発明したCPAが如何にして発展し,学術界や産業界に貢献してきたかという視点に加え,同氏が持つフェムト秒レーザー加工に関する基本特許(ミシガン特許)の期限が切れたことで,今後の産業応用の可能性を示す場となった。

なお,次回(2019年度)の研究会は『光応用プロセスの基礎と先端技術』をテーマに7月9日に開催される予定だ。

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