名大ら,数万気圧極低温下での単結晶X線結晶構造解析に成功

名古屋大学,量子科学技術研究開発機構,高輝度光科学研究センターらは,大型放射光施設SPring-8における圧力下単結晶X線回折実験による結晶構造解析方法を確立し,電気通信大学,東京大学,総合科学研究機構中性子科学センター,高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所とともに圧力下で劇的な変化を示す物質の結晶構造とその変化のメカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。

我々の身の回りでは,多くの機能性材料が生活を支えているが,それらが実際に役に立つまでには様々な外場に対する応答が研究される。圧力は最も基本的な外場の一つだが,物質の性質を劇的に変化させ,将来,我々の社会を変えうる物理現象が多く発見されている。

これらの新奇な物理現象を正しく解明するには圧力下において精密に結晶構造を決定しなければならない。単結晶X線回折は結晶中の規則正しく配列した原子による散乱現象を用いるため,原子配置を精密に決定できる。しかし圧力下単結晶X線回折実験は構造解析手法が十分整備されておらず,精密な結晶構造解析の報告は比較的単純な物質に限られていた。

今回,研究グループは,SPring-8のビームラインBL22XUの高圧実験用X線回折計を用いて,高圧下単結晶X線回折実験の測定法の改良および構造解析手法の開発を行ない,圧力を1〜8万気圧,温度を-263~30℃まで変化させ様々な条件下で構造解析を行なうことで,およそ3万気圧で原因不明の相転移を示す遷移金属層状化合物Ta2NiSe5の構造解析を精密に決定した。

このTa2NiSe5は,1960年代に理論的に予言された“励起子絶縁体”という珍しい電子状態が実現しているとされる数少ない候補物質の一つで,現在,その物理現象の解明に向けて世界中で研究が行なわれている。応用面でも高効率の赤外線検出材料として注目されている,大変興味深い物質。

研究グループは,高圧低温という多重極限条件下での精密な構造解析によって,層状構造をもつこの材料が層間のクーロン相互作用によって層がスライドする特異な相転移を引き起こしていることを突き止めた。単結晶X線回折により,十分な精度の結晶構造解析が可能であることを示したことで,今後,より幅広い物質の圧力下の電子状態を議論することが可能となるとしている。

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