筑波大,共役ポリマーのマイクロ球体からレーザー発振

筑波大学の研究グループは,産業技術総合研究所,台湾国立精華大学,独ライプニッツ光技術研究所と共同で,共役ポリマーから形成するマイクロ球体からのレーザー発振に成功した(ニュースリリース)。

有機光エレクトロニクスにおける挑戦的課題の一つに,有機EL素子からのレーザー発振の実現がある。これまでに様々な共振器素子構造がその候補として試されてきたが,有機半導体材料への電荷注入によるレーザー発振が実現された例なかった。

一方,共振器として期待される構造の1つに,マイクロメートルサイズの球状構造体がある。マイクロ球体中に光が閉じ込められると,ウィスパリングギャラリーモード(WGM)が誘起される。WGMは光の閉じ込め効率が高いため光の損失が少なく,レーザー発振の低閾値化が期待できる。

しかしながら,これまでに報告されたポリマーマイクロ球体は,いずれも電荷の注入ができない非共役系ポリマーに蛍光色素を添加した系であり,共役ポリマーのみから形成するマイクロ球体によるレーザー発振の報告はなかった。

研究グループはこれまでに,共役ポリマーが自己組織化によりマイクロサイズの球体を形成すること,および,発光が球体内部に閉じ込められて自己干渉により共鳴するWGM発光が観測されることを報告している。しかし,使用していたポリマーは光耐久性が低く,励起光強度を上げることによる反転分布状態が実現できないため,レーザー発振現象の観測には至っていなかった。

研究では,新たにミニエマルジョン法という手法を用いて,様々な共役ポリマーのマイクロ球体を作製した。その中で,光耐久性や発光特性が高い高分子材料の一つであるポリフルオレン(F8)から作製したマイクロ球体1粒子に対してフェムト秒パルスレーザーを照射して,発光スペクトルを計測した結果,1.5µJ/cm2の低閾値での青色レーザー発振が観測された。これは,自己組織化で作製されたポリマー球体に蛍光色素を添加した系と比較して,同程度の低いレーザー発振閾値。

また,この共役ポリマー球体は,4万パルス以上の連続的な光照射後にも十分なレーザー発振強度を示し,高い光耐久性を示した。また,同様に,他の種類の共役ポリマー(F8BT,MDMOPPV)球体からも,フェムト秒パルスレーザー励起によってそれぞれ緑色,赤色のレーザー発振が確認された。

次に,光耐久性向上およびレーザー発振の低閾値化について検討したところ,酸化チタンでF8球体を被覆することで,レーザー発振強度の半減値が4万パルスから12万パルスまで向上し,それに伴い,材料破壊が起こるダメージ閾値(Pd)も向上した。これは色素分散系も含めた現存の有機レーザー材料の中で最も高い耐久性になる。

さらに,銀薄膜基板上に固定化したF8球体において,レーザー発振閾値を約1/4(0.37 µJ/cm2 )にまで低下させることに成功した。FDTD シミュレーションから,これは,銀基板による反射(ミラー)効果により基板への光の漏れ出しが低減した結果であることが明らかになった。

今回,電荷注入可能が可能な共役ポリマー球体から,高い光耐久性での光誘起レーザー発振が確認された。今後は軽量・フレキシブルな光回路やマイクロレーザー光源,さらには電極からの電荷注入による有機電界発光レーザーの実現が期待されるとしている。

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