量子光コヒーレンストモグラフィ ─量子もつれ光による超高分解能光計測の実現に向けて

1. はじめに

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 光を用いた精密計測は,現代科学に不可欠な要素技術であり,これまでに多大な発展を遂げてきた。特に光の干渉現象を利用した光干渉計は,高分解能・高感度な光計測を可能にした。かつてはマイケルソンとモーレーが光干渉計を用いて光速度の精密測定を行い,光速度一定の原理に基づくアインシュタインの特殊相対性理論へと繋がった。近年では,数km規模の巨大光干渉計を用いて,十数億光年の彼方からの重力波を検出し,アインシュタインの一般相対性理論の予測を実証したとの報告がなされる1)など,基礎科学に重大な貢献をしている。

また応用面では,光コヒーレンストモグラフィ(OCT)2)が非常に注目されている。OCTは低コヒーレンス光干渉を利用しており,非侵襲で非破壊,かつ簡便な断層イメージング法として医療の分野で広く応用され,特に眼科診断における眼底計測では不可欠な診断技術として確立されている3)。現在では網膜以外にも,皮膚,心臓血管,肺などの診断にも応用されており,広範囲に及ぶ展開が期待されている技術である。

 一方,光が「光量子」として量子力学的な性質を持つことがアインシュタインにより提唱されて以降,その一見不可思議とも思える性質は活発に研究されてきた。中でも「量子もつれ」と呼ばれる複数の粒子(光量子など)間の量子力学的相関は,従来の常識と矛盾するように思われるなど,多くの哲学的論争を呼び起こした。しかし近年ではそれらの性質を上手く積極的に利用し,情報処理や情報通信に応用しようという研究が盛んになされている。

例えば,従来のコンピュータでは膨大な時間がかかるような問題を瞬く間に解くことができる「量子コンピュータ4)」,原理的に盗聴が不可能で安全性が保証された「量子暗号通信5)」などが注目されている。他にも光の量子力学的性質を巧みに用いた研究は多岐に渡り,基礎・応用の両面から発展が期待されている6)

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