4. 水銀ランプ代替を目指した高性能化の取り組み
260 nmブロード発光のLAFi260は殺菌,検査用,化学物質分解など幅広く応用され高性能化の要望が強い。発光強度を上げる高出力型インバータの開発と並行して,面光源の空冷改善に取り組んだ。図11に示すように電極基板にチューブ発光素子と直交するスリットを設けて冷却風を通すことで空冷効率を大きく改善した。

図12に示すように,当社標準サイズ8×6 cm2面光源(消費電力25 W,発光強度15 mW/cm2の設定)では,スリット型電極基板の適用と空冷ファンの最適化により,点灯開始後の表面温度が30秒で安定し,環境温度+17℃程度の上昇に抑えられた。フレキシブル型の流水殺菌モジュールにもスリット電極を適用している。

チューブ発光素子のガラス管には熱加工しやすいホウ珪酸系ガラスなどを用いており,細管化によりUVC波長域での透過率と押圧に対する強度を維持している。270 nm以下の短波長側で透過率が徐々に低下していたが,図13に示すように改良された新ガラス素材によって3割の透過率改善が得られた。

図14に示すように,発光効率を改善するためのチューブ発光素子設計の最適化要素が多数ある。スリット型電極基板は,放電の電流を抑制して発光効率向上にも寄与している。ガラス管の透過率改善と放電空間拡大により2倍の発光効率改善を得て,2024年には20 mW/cm2(8×6 cm2面光源で発光出力1,000 mW)を製品化した。2018年からこれまでの発光強度改善の推移を図15に示す。直近では実験的に40 mW/cm2のデバイスにトライしており,製品化を目指してさらに改良を進めていく。

低圧水銀ランプ254 nm代替を検討する応用装置メーカーからの要望に対応して,更なる発光強度向上に取り組んでいる。放熱が十分であれば,投入電力増強や放電空間内のXeガス密度を上げることで発光強度向上が可能である。図13の40 mW/cm2を製品化したあと,最終目標として80 mW/cm2を目指している。

Xeガスから放射されるVUV光を増やすためチューブ発光素子内により多くのXeガスを封入する場合は放電をより安定にコントロールする技術が必要となる。今後,放電空間や駆動電極などのデバイス構造,高速パルスなど駆動回路技術と合わせて開発を進める。