バッテリーフリーが当たり前の時代へ ― 光無線給電の有効性

-効率化の点で光源1つで複数デバイスに同時給電する研究もされています

遮蔽物を回避して複数のデバイスに安定した給電を行うため、複数の光源を配置する方法があります。ただ光源1に対して受電デバイス1では効率が悪いので、例えば光源2:受電デバイス10など、一つの光源で複数ターゲットを順次・同時にカバーする方式を研究しています。

照明のように光源を複数配置し、遮蔽物があってもいずれかの光源で給電できる冗長構成にする発想です。10~20台のセンサーを1台の光源で面倒を見る、といったスケールを目指しています。

冗長構成で途切れない
光無線給電システム

普及の要はコストダウンと安全性

-光無線給電研究分野からレーザー・光技術に求めることは

第一にコストダウンです。光無線給電インフラ構築が進むと大規模な数のレーザーが必要になるので、その社会実装を進めて販売台数を増やし、規模効果で販売価格を一桁、二桁下げることが重要だと思います。

第二に効率の向上です。光源側、特に光無線給電の理論特性に優れる青色レーザーの更なる効率改善に加え、受光素子の最適化も要になります。

第三にレーザー使用による人体への安全性の確保です。遮蔽、アイセーフレーザー、検知停止など、人がいる環境での実装を支える仕組みづくりが鍵になります。ただし倉庫や宇宙など人が居ない場所で使用する場面ではそのコストが抑えられると思います。

-安全性も考慮した波長選択は

使用する波長候補は幾つかありますが

・近赤外:発電素子が安価で効率も高く、研究デモや一部の実用に適しています。

・1.5 μm帯(アイセーフ):目に安全な領域で、地上導入のハードルを下げやすい一方、現状は光源・受光側の効率が低めです。

・短波長(青~緑):指向性が強く同じ光学系で到達距離を伸ばせます。さらに水中では青~緑が減衰しにくく有望です。課題は受光素子の最適化と高効率光源の更なる改善です。

これらの波長が考えられます。また用途の広さから波長・距離・出力ごとに複数の方式が並立すると見ています。

-光無線給電分野の企業動向は

日本では近年、本分野のベンチャー企業が立ち上がって活動を始めています。海外でもすでに数社が光無線給電に取り組んでいますが、海外の場合、大学があまり研究していない国もあり、ベンチャー企業がより独自性を出す形で成立しています。

テスト的に取り組む大手企業もありますが、市場性や安全性がまだ見えにくい分野なので大規模な取り組みはまだ難しいかもしれません。

ただし、もし一度大きな資金が動けば一気に加速する可能性があります。事業化の判断が難しい大手企業よりもベンチャー企業の方が素早く事業展開できるので その点は強みですね。

光無線給電のベンチャー企業数はまだ少ないのですが、5年後には10社以上のスタートアップがあるかもしれません。社会的にも産業的にも、そうした動きが広がっていくことを期待しています。

関連記事

  • 注目のパワーレーザー―日本の戦略と研究開発の行方

    ―小型化・高耐久化はどのように進むと考えられますか これまでのレーザー開発は,大出力化とともに装置も大型化してきました。しかし今後は,ビーム径を一定以下に抑え,複数ビームを組み合わせる方向に進みます。AIやコンピュータ技…

    2025.10.16
  • レーザー核融合の半世紀-浜松ホトニクスが描く「10kJ・10Hz」へのロードマップ

    -最近の開発成果をお聞かせください。 2016年,東京大学の小林洋平先生をプロジェクトリーダーとした新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」で250J・10Hz級…

    2025.10.16
  • レーザーを使いこなし,品質保証に繋げる加工プロセス開発が重要

    ─銅材料の特性を十分に理解する必要があるということでしょうか 溶接分野では,比較的適用が多い鉄鋼材料やステンレス鋼に比べて,銅材料は熱がスーッと早く逃げていきやすいので,熱伝導率がかなり大きいという特性があります。ですか…

    2024.08.12
  • 光プラスαの技術で水中ビジネスを加速させる!

    ─改めてALANコンソーシアムが目指していることを教えてください 海など水中環境は,地上や空間で使用されている電波を使うことができませんので,現時点での通信手段としては音波などが利用されています。 ALANではこの環境に…

    2024.03.12
  • 学術と産業の架け橋となり,更なるイノベーション創出を

    ─久間会長が特に推し進めてこられた取り組みを振り返ってお聞かせください。 そもそも学会の役割というのは学術の振興,関係分野における科学技術成果の社会実装,人材育成の3つが挙げられると思います。私が会長に就任して実現しよう…

    2024.01.15

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア