輝度を超える鍵
―流れが変わると思ったのは
まさに、フォトニック結晶レーザーの発振に成功した、1999年です。当時はまだまだ未熟なものではありましたが「半導体レーザーの世界が変わる」と直感しました。DFBレーザーでは、大きく拡がり、乱れたビームが、非常に狭い拡がり角の一点のビームになったのです。その結果、どんなに面積を大きくしても綺麗なビーム(=高輝度ビーム)が出せるのではと直観的に思いました。ここで、輝度は「単位面積、単位拡がり角当たりに、どれだけパワーを集められるか」を表します。従来はパワーを上げるために、デバイス面積を大きくすると、複数の横モードが発生し、ビームが大きく乱れ、輝度が上がらない。ここを破れれば、加工、センサー、通信の景色が変わると考えました。
―苦労されたところや予想外な失敗は
どんな研究も最初からうまくいくことはありません。大体、予想外のデータが出ます。その時は、通常、見たくないという心理が働きます(笑)。でも、そこにヒントがある。例えばビームが変な拡がり方をしているなら、その原因がどこにあるのかを一つ一つ分析する。それをもとに、新たに思想で、設計し、次のデバイスへつながる。さらにまた予想外が出て、そこから次の物理が見えてくる。嫌なことに目をそらさないことが大事です。私は「自然は不可思議だけれども、悪意はない」というアインシュタイン氏の言葉を大切にしています。丁寧に掘れば必ず答えが出る、という意味です。

―最大のブレイクスルーとは
まず、2次元フォトニック結晶のバンド構造の特異点にて、2次元コヒーレント動作し得ることを見出し、極めて狭い面発光ビームを出せたことです。1999年に三角格子で概念を示し、その後、高出力化に適した正方格子へ展開してワット級へ伸ばしました。さらに二重格子(ダブルラチス)という新たな構造を見出し、モード制御の自由度を高め、さらに、非エルミート物理の深化により、直径3ミリでも単一モード動作を実証できた。輝度は1GW/cm2/sr級に達しています。いまは直径10ミリを目指しており、数百ワットからキロワット級が見えてくる。半導体レーザーが「輝度不足」で届かなかった領域へ手が届き始めました。

さらに、変調フォトニック結晶という新たなフォトニック結晶の概念をも提唱しました。これは、外部にレンズやDOE(回折光学素子)などを用いずとも、任意の形状のビームを出せるものです。これをうまく使うと、オールチップ型(すなわち、全半導体)の低コスト・高信頼性のLiDARの実現にも繋がり、これが、自動運転の発展にも寄与すると期待されます。
―研究を続けてこられた原動力とは
新しい物理が見える瞬間の面白さと、社会実装の手応えが循環することです。予想外の結果が出る、議論して理解する、設計が一気に前へ進む。しかもフォトニック結晶レーザーは、成果が産業につながる道筋がはっきりしている。学術と実装が互いに回り始めると研究は加速します。



