オールジャパンで挑め!ペロブスカイト太陽電池の産業化

国内ではペロブスカイト太陽電池の事業化に向けた実証実験が活発に進められている。今回ペロブスカイト太陽電池の発明者で知られている桐蔭横浜大学・特任教授の宮坂力氏にペロブスカイト太陽電池開発・市場を巡る攻防について話を聞いた。

開発は如何にして環境に配慮するか

宮坂先生が発明されたペロブスカイト太陽電池ですが,研究の一つの方向性として無鉛化があると聞いています。その進捗状況をお聞かせいただけますか

我々は鉛に代わる材料を,AIを使った計算や実験によって探索し,さらには実際にモノを作って調べています。既にこの10年間で,他の方々も鉛以外のものにチャレンジしてきましたが,結果的には鉛ほど性能が高いものがほぼ見られていません。

唯一,7割ぐらいまで性能がでているのが錫です。そもそも,どうして鉛がそんなに性能が良いかというと,鉛の金属原子が持っている電子軌道の特徴として,光が当たってできた電子が熱に変わる損失が理論的に少ないからです。これと同じような機能を持っているのが,錫です。

ところが,大学の研究室で行なう基礎研究では良い性能が出てるんですけれども,非常に不安定な問題があります。どれくらい不安定かというと,錫というのは空気にさらすだけで,すぐに酸化が始まります。これが避けられないんです。

錫で実用化しようとすると徹底的に酸素をブロックした封止構造にすることです。しかし,これも非常にまだ難しいのです。ただ,錫と鉛を混ぜる,特に単純に一対一で混ぜたものというのは圧倒的に安定的で,鉛ほどではないですけれども使えるようになります。無鉛化に向けては,鉛をゼロにはできないけれども,半分に減らすという場合には錫の出番があります。これが一つです。

完全に無鉛化するには,錫だけでは不安定な問題があるので実用化は難しいのですが,それ以外のものというとメニューがかなり限られます。挙げるとするならば,ハロゲン化銀ビスマスを用いてペロブスカイト太陽電池を作製することはできます。つまり,銀(Ag)とビスマス(Bi)を使うというものです。ただし,現在の変換効率は5%前後です。

鉛系を含んだペロブスカイト太陽電池の変換効率は20%を超えているので,それほど高い変換効率を必要としない応用先ということで,我々は腕時計メーカーと共同研究を進めていて,腕時計や電卓に無鉛化したペロブスカイト太陽電池が導入できないかと研究開発に取り組んでいるところです。

より性能を高めるには?

鉛をむしろ受け入れてペロブスカイト太陽電池を作っていくのが良いでしょう。そのために,ユーザーから鉛を環境の優しい方法で如何に安定的に回収するかがポイントになります。私は2004年に設立したベンチャー,ペクセル・テクノロジーズで昨年12月からペロブスカイト太陽電池キットの製造・販売を開始していますが,このキットは光源を含めて37,000円で販売しています。

このキットが不要となり廃棄するとなった際に,ユーザーから100%回収するための仕組みとして,10,000円程度で買い取りするビジネスモデルを取り入れました。このように回収までも保証するのは必要でしょうね。廃棄するにもコストはかかりますから,そのコストもお客様に負担してもらう。そうしていかないことには,これからの普及には結びつかないと思っています。もちろん,無鉛化を諦めるというわけではありません。これは継続して開発を行なっていく必要があります。

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