―今後の光産業の方向性についてはどうお考えですか?
まだ、技術開発途上にある段階ですが、CPUやGPU周辺の光配線技術や光チップレットの開発など情報処理分野は、経済産業省の半導体・デバイス戦略の中にも位置づけられており、光産業技術の中でも特に注目されています。AIの普及によって、データの処理速度や伝送量が増大しており、シリコンフォトニクスなどそれを支える新しい技術が求められています。NTTのIOWN構想や光協会関連のスタートアップ企業アイオーコア㈱などの動きがあります。
また、AIに関連し分散コンピューティングに適用可能なデバイスとして、化合物半導体とシリコンフォトニクスを組み合わせた異種材料光集積回路技術が開発されています。これは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで技術研究組合光電子融合基盤技術研究所が研究開発に取り組んでいるものです。
宇宙や海洋といった極限環境での光通信技術も重要です。例えば、スペースXが3万機の衛星を打ち上げる計画を進めている中で、技術や資金が必要となるこの分野で日本企業がどう対応するかが問われています。大きなチャレンジですが、一方で新しい成長の機会でもあります。
次の有望な技術は、自動運転や空飛ぶ車、ドローンなど新たな動きがみられるモビリティ分野での光センサーで、その需要は今後増加する見込みです。また光センサーは監視カメラなどセキュリティ分野でもいろいろな応用が考えられます。 さらに、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)など仮想空間の実現に使用される、3次元ディスプレイ、眼鏡型ディスプレイなどの新たなヒューマンインターフェース関連の新技術も開発されつつあります。
―こうした変化と新生インターオプトとの関連についてお聞かせください。
これまで述べてきた変化に対応し、新しい分野での技術の動向を探ることを狙いとして、今年のインターオプトでは「光情報処理・ネットワーク」、「モビリティフォトニクス」、「ヒューマンインターフェース」といったゾーンを設けました。
光情報処理・ネットワークゾーンでは前述したソフトウェアを含む光電子融合基盤技術研究所の研究成果、アイオーコア㈱の製品や通信用光源・光学素子など、モビリティフォトニクスゾーンでは車載用LiDAR向け光デバイス、赤外線カメラ、自動車部材用分光イメージングなど、ヒューマンインターフェースゾーンでは裸眼3Dディスプレイ、ディスプレイ対応光デバイスなどが展示されます。
また、光協会主催のOITDAセミナーでは「IOWN構想など将来の光技術」をテーマに変化に対応したプログラムを組んでいます。NTTが主導するIOWN実現に向けたデバイス技術、車載ナイトビジョン、長距離LiDAR、可視光レーザー空間照射応用の4件の講演を予定しています。