ガウシアンビームの伝播(3)

著者: sugi

【お詫びと訂正】月刊OPTRONICS 5月号の本連載におきまして,P111掲載の数式(3-11)に間違いがございました。読者の皆様にはご迷惑をお掛けしましたことお詫び申し上げます。なお,本稿における当該の数式は修正済となっております。

1 はじめに

レーザーオプティクスアプリケーションの多くで,レーザービームは理想的なガウス分布に沿った放射強度プロファイルを持つガウシアンと想定されている。本稿では,多くのアプリケーションで必要となるビームの一点集光について,関係する方程式を示しながら解説する。

図1 レーザービームを可能な限り小さなスポットサイズに集光することは,レーザー切断を始めとする広範なアプリケーションに不可欠となる

2 ガウシアンビームの一点集光

レーザー材料加工や手術のようなアプリケーションの多くでは,強度を最大化しながら加熱エリアを最小化するため,レーザービームを可能な限り小さなスポットサイズに集光することが大変重要になる。この場合の目標は,w0’を最小にすることである(図1)。式(2-6)を変形したものが,出力側ビームウエストを最小にする方法を特定するために用いられることがある1,2)


(3-1)





式(3-1)の両辺に左辺の分母を乗算し,次に両辺を(w0’)2で乗算すると,次式のようになる:


(3-2)


(3-3)

上の式をw0‘に関して解くと次式のようになる:


(3-4)


(3-5)

集光したビームウエストは,レンズの焦点距離と|s|-fを小さくすることで最小にすることができる。式(3-4)のw0に隣接する項は,入力ビームの値をレンズ通過後の出力側ビームの値と比較するため,倍率定数αを用いた別の形式として表される(図2)1)


(3-6)


(3-7)

 (3-8)

出力側ビームウエストのサイズと位置の計算をよりシンプルにする2つの特異なケースがある。それは,sがzRよりも遥かに小さい場合と,sがzRよりも遥かに大きい場合である1)。レンズがレーザーのレイリー領域内にある時,s≪zRかつ(|s|-f)2R2となる。これにより,式(3-5)は次のシンプルなものになる:


(3-9)

これにより,出力側ビームのウエストや発散角,レイリー領域やウエスト位置の計算もシンプルになる:


(3-10)


(3-11)


(3-12)


(3-13)

s≫zRの時,レンズから集光スポットまでの距離はレンズの焦点距離に等しくなる。

他の特異な状況は,レンズがレイリー領域の遥か外に配置され,s≫zRになる時,式(3-5)は次のシンプルなものになる:


(3-14)

これにより,出力側のビームウエスト径は次式で与えられる:


(3-15)

s≪zRである時と同様に,出力側のビームウエストや発散角,レイリー領域やビームウエスト位置の計算もシンプルなものになる:

図2 倍率αが2の時,出力側ビームウエストは入力側ビームウエストの2倍になり,出力側発散角は入力側発散角の半分の大きさになる


(3-16)


(3-17)

 

図3 レンズ通過後のガウシアンビームの集光点は,入力側ビームウエストがレンズに極めて近いか,あるいはレンズから非常に離れている場合に,レンズの焦点に位置する。これは,入力側ビームがこうした地点ではほぼコリメートになるためである


(3-18)


(3-19)

s≫zRの時,レンズから集光スポットまでの距離はレンズの焦点距離に等しくなる。

ビームウエストとそこから大きく離れた位置ではビーム波面がほぼ平面になることから,この両方の結果は直感的に理解できるものである。これらの位置では,ビームはほぼ完全にコリメートされている(図3)。標準の薄レンズの公式では,コリメートされた入力ビームの像距離はレンズの焦点距離に等しくなる。

参考文献
1.O’Shea, Donald C. Elements of Modern Optical Design. Wiley, 1985.
2.Optronics No.459, Apl. 2020


Gaussian Beam Propagation 3
■Edmund Optics Japan Co., Ltd.

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