測量法⑵

著者: sugi
図4 DIC顕微鏡は像面で光路長の勾配を強度の違いに変換し,他の測定法では検出するのが困難なレーザー誘起損傷の可視化を可能にする
図4 DIC顕微鏡は像面で光路長の勾配を強度の違いに変換し,他の測定法では検出するのが困難なレーザー誘起損傷の可視化を可能にする

セクション3:微分干渉コントラスト顕微鏡法
微分干渉コントラスト(Differential Interference Contrast;DIC)顕微鏡法は,透過材料内の欠陥を高感度に検出し,特に光学用コーティングや光学面のレーザー損傷を特定するのに用いられる(図4)。こうした欠陥を従来の明視野顕微鏡法を用いて観察することは,試料が透光性のため困難である。しかしながら,DIC顕微鏡法では,屈折率や表面勾配,或いは厚さの変化に起因する光路長の勾配を強度の違いに変換して像を結ぶことで,コントラストを改善する。

表面勾配やくぼみ,そして面の不連続性のコントラストを強調する画像となり,面のプロファイルを明らかにする。DICの画像は,試料の光路長の変動に対応した3D画像になるが,この3D画像は,試料の実際の3Dトポグラフィを表しているわけではない。

図5 ウォラストンプリズムを用いて入力ビームを2つの偏光成分に分離するDIC顕微鏡法の典型的構成
図5 ウォラストンプリズムを用いて入力ビームを2つの偏光成分に分離するDIC顕微鏡法の典型的構成

DIC顕微鏡法は,光源を振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に分離するため,偏光板と複屈折性のウォラストンあるいはノマルスキープリズムを使用する(図5)。2つの振動成分は,顕微鏡の解像限界に等しい距離だけ離れた状態で対物レンズによって試料面上に集光される。コンデンサーレンズによってコリメートされた後,2つの成分は別のウォラストンプリズムによって再合成される。

再合成した光は,次に2番目の偏光板,即ち検光子を通過する。検光子の偏光軸は,1番目の偏光板のそれに対して直交するように配置される。2つの成分の光路長の違いから生じる干渉が,明るさの違いとなって見えるようになる。

DIC顕微鏡法の問題の一つに,他の顕微鏡法に比べて高価な点があげられる。異なる偏光成分の分離や再合成に用いられるウォラストンプリズムは,位相差顕微鏡やホフマン変調コントラスト顕微鏡などの顕微鏡法に必要な部品よりも遥かに高価になる。

図6 干渉計は面の形状を決定するのに増加的干渉(左)と減殺的干渉(右)を用いる。被検オプティクスと参照オプティクス間の表面形状の違いが位相差を引き起こし,目視可能な干渉縞となって現れる
図6 干渉計は面の形状を決定するのに増加的干渉(左)と減殺的干渉(右)を用いる。被検オプティクスと参照オプティクス間の表面形状の違いが位相差を引き起こし,目視可能な干渉縞となって現れる

セクション4:光学干渉法
光学干渉法は,干渉を利用して小さな変位や面の不規則性,及び屈折率変化を測定する。<λ/20の面イレギュラリティを測定することができ,平面や球面レンズ,非球面レンズ,及びその他光学部品を定量化するのに用いられる。

図7 テストビームと参照ビームによって増加的干渉を引き起こす明るいエリアと減殺的干渉を起こす暗いリングを映し出す干渉計のサンプル画像(左)と,その結果得られた被検オプティクスの3D再構築画像(右)
図7 テストビームと参照ビームによって増加的干渉を引き起こす明るいエリアと減殺的干渉を起こす暗いリングを映し出す干渉計のサンプル画像(左)と,その結果得られた被検オプティクスの3D再構築画像(右)

干渉は,光の複数の波が重なり合い,新たなパターンが形成された時に起こる。干渉が起こるためには,複数の光の波の位相が揃い,かつ偏光状態が互いに直交していない状態になければならない。波の山同士,または谷同士が揃っている場合,増加的干渉を引き起こして振幅が増える方向になる。これに対して,ある波の山と他の波の谷が揃っている場合は,減殺的干渉を引き起こして互いに打ち消しあう方向になる(図6)。

光学干渉計は,光源からの光をテストビームと参照ビームの2つのビームに分離するのにビームスプリッターを通常使用する。2つのビームは,光検出器に到達する前に再合成されるが,この時2つの光路間の光路長差が干渉を引き起こす。これにより,テストビームの光路中にある光学部品と参照ビームの光路中にある参照板を比較できるようになる(図7)。2つの光路間の増加的干渉と減殺的干渉が,干渉縞のパターンとなって現れる。反射型と透過型の光学部品とも,参照板への透過波面または反射波面と比較することで測定が行える。

図8 代表的な干渉計の構成
図8 代表的な干渉計の構成

光学干渉計には複数の共通する構成がある(図8)。マッハ・ツェンダー干渉計は,1つのビームスプリッターを利用して入射ビームを2つの別々の光路に分離する。2番目のビームスプリッターで2つの光路を2つの出力に再合成して光検出器に送る。マイケルソン干渉計は,ビームの分割と再合成に1枚のビームスプリッターを使用する。マイケルソン干渉計の派生とも言えるトワイマン・グリーン干渉計は,単色点光源を光源に用いて光学部品を測定する。

フィゾー干渉計は,マイケルソン干渉計でのビームスプリッターに直交するようにビームスプリッターを追加配置し,システムがミラー一つだけを必要となるようにしている。ファブリ・ペロー干渉計は,2枚の平行な部分透過ミラーを用い,2つの別々のビーム光路ではない複数の光路を作り出している。

干渉計を構成する光学部品上の塵粒子や欠陥は,検査対象の光学部品とは関係なしに光路長差を作り出し,光学部品上の表面欠陥として捉えてしまう可能性がある。光学干渉計は,ビーム光路の正確な制御を必要とし,測定時にレーザー雑音や量子雑音の影響を受けることもある。




■Metrology⑵
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