ミニインタビュー

石川先生に聞く
試行錯誤の先に見える,表面偏析研究の面白さ
─研究を始めたきっかけから
もともと学生時代に有機薄膜太陽電池の研究をしていて,その中で表面偏析の制御に取り組んでいました。その流れで,ペロブスカイト太陽電池でも同様の制御ができれば,より面白い現象が引き出せるのではないかと考えたのがきっかけです。
当初はフッ素系材料を使っていましたが,規制の強化もあり,別の原理での制御方法を模索するようになりました。
─この研究の面白さを教えてください
表面偏析は非常に薄いので,直接観察できない点が特徴です。そのため,間接的な様々な手法で「こうなっているのではないか」と組み立てていくプロセスが,推理みたいで面白いですね。
また,研究のサイクルが比較的速いので,試行錯誤を繰り返しながら結果を確認できる点も魅力です。
─研究している中で苦労をしていることは
測定原理の関係で,すべての評価をまったく同じサンプルで行なうことはできません。例えば,ある測定では特定の基板上に試料を作製する必要がある一方で,別の測定では観察している範囲やスケールが異なることがあります。
そのため,局所的な情報と広い範囲の情報など,複数の測定結果を組み合わせて研究を進めています。ただし,それらの結果が完全に一致するわけではありません。得られたデータをどう結びつけ,そこから何が言えるのかを導き出すところに難しさがあります。
─どのように応用されることを期待しますか
ペロブスカイト太陽電池は現在,実用化が進みつつありますが,まだコスト面の課題があります。私が研究している技術は低コスト化に寄与する可能性があるため,産業として実用化されれば,非常にやりがいを感じます。
─若手研究者が置かれている状況について
近年は,一つの論文に求められる情報量が増えており,研究をチームで進める傾向が強くなっています。そのため,共同研究が活発になり,さらにAIの活用によって情報収集や整理は格段に効率化されています。研究の進めやすさという点では良くなっている部分もありますね。
一方で,一人で主体的に研究を進めることが難しくなっているとも感じており,研究において最終的には個人の力が重要であることに変わりはありません。
─若手や学生に向けてメッセージをお願いします
私は化学分野からスタートして,その後,機能材料工学科,さらに電気電子物理工学の分野へと進んできました。研究の環境や分野が変わることもありますが,それぞれの状況下でできることは必ずありますので,自分にできることに取り組んでいくことが大切だと思います。
(聞き手:梅村舞香)
いしかわ りょう
所属:埼玉大学 大学院理工学研究科 数理電子情報部門 准教授
略歴:2013年3月,埼玉大学大学院理工学研究科博士後期課程理工学専攻物質科学コースを修了。同年4月より同大学大学院理工学研究科物質科学部門助教に着任。2026年4月からは,同大学大学院理工学研究科数理電子情報部門准教授として研究に従事している。
趣味:映画鑑賞(好きなジャンルはSF)
(月刊OPTRONICS 2026年6月号)



