ミニインタビュー
飯谷先生に聞く
ロボットから人へ,光で支える健康のかたち

─この研究を始めたきっかけを教えてください。
(飯谷)医療用ロボットの研究をきっかけに,化学物質を感知するバイオセンサーに興味を持ったのがきっかけです。もともとは医療用ロボットからスタートした私の研究ですが,今では人に寄り添い,健康を支える新しいかたちのセンサー開発へと進んでいます。
─この研究の面白さを教えてください。
(飯谷)普段見えないにおいやガスを可視化できるのが一番面白いところです。例えば,果物の発酵で発生するエタノールを色で示すことで,目に見えない内部の状態を読み取ることができます。視覚と化学情報をつなげることで,新しい発見が生まれ,糖尿病の診断補助や脂肪燃焼の把握など,医療分野への応用も期待されている点にも大きな魅力があると感じています。
─研究している中で苦労していることはありますか。
(飯谷)特に苦労しているのは,バイオ材料の扱いです。酵素のような生体材料は性質に個体差があり,再現性や安定性を保つのが難しく,最適な環境の調整や時間による変化にも対応する必要があります。こうしたバイオ特有の個性を理解しながら設計していく点が,今直面している技術的な難しさです。
─この研究がどのように応用されることを期待していますか。
(飯谷)体から放出されるガスの種類や場所が分かれば,疾患の診断に役立つ可能性があります。また,これまで視覚や他の指標に頼っていた検査を,においや化学成分のイメージングにより支援することで,新しいスクリーニングの手法につながると期待しています。
─若手研究者が置かれている状況をどう見ていますか。
(飯谷)若手研究者として,30代前半までは研究助成などの支援が比較的充実しており,恵まれた環境だと感じています。ただ,年齢とともに支援のハードルは少しずつ高くなる印象もあります。大学によっては,段階的に昇進できる制度や若手枠の優遇もあり,大学に残りやすい仕組みが整っているケースもあります。5年ごとの成果が求められるプレッシャーはありますが,全体的には以前より支援環境は良くなっていると思います。
─さらに若手や学生に向けてメッセージをお願いします。
(飯谷)学生時代から学会に参加して発表を続けてきましたが,キャリアが進むにつれて同年代の研究者が減っていくことに寂しさを感じています。一方で,分野を越えた学会では,同じ志を持つ同年代の人たちと出会えることがあり,大きな励みになります。そうした出会いが研究を続ける力になっており,自分に刺激をくれる場を見つけることの大切さを実感しています。
(聞き手:梅村舞香/杉島孝弘)
①イイタニ ケンタ
所属:東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所 センサ医工学分野 講師
略歴:東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所 講師。2014年 沼津工業高等専門学校専攻科修了,16年 東京医科歯科大学大学院修士課程修了,同年 JSPS 特別研究員DC,19年 東京医科歯科大学大学院博士課程修了(博士(工学)),同年 JSPS 特別研究員PD,21年 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 プロジェクト助教,22年 助教,24年より現職。バイオセンサシステムの研究開発およびその生体応用研究に従事。
趣味:子供と一緒にパンを作ること(娘さんの将来の夢はパン屋ではなくピーポー(救急車の中の人))
②チョウ コウ
所属:東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所 センサ医工学分野 プロジェクト研究員
③イチカワ ケンタ
所属:東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所 センサ医工学分野 助教
④ミツバヤシ コウジ
所属:東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所 センサ医工学分野 教授
(月刊OPTRONICS 2025年9月号)



