ガス分子のバイオ動画像センシング技術および経皮ガス応用

5. 複数成分(マルチガス)の同時イメージング

図5(b)の評価において,EtOHとAcHのイメージングは別日に実施し,重ね合わせている。これは,ガス濃度分布の観察に用いる媒体が両者ともにNADHであり,同範囲を観察する場合にEtOHイメージング用メッシュとAcHイメージング用メッシュを重ね合わせて使用するだけでは各ガス成分を独立にイメージングできないためである。そこで,図6(a)に示すように「EtOH濃度分布を二段階の酵素反応(ADHおよびdiaphorase, DP)によるレゾルフィン(波長590 nm)の蛍光強度増加」にて,「AcH濃度分布をADHによるNADH(波長 490 nm)の蛍光強度減少」にてイメージングする反応系を構築した。各反応系を組み込んだメッシュを重ね合わせ配置し,レゾルフィンおよびNADH励起用の両光源を照射した状態でカメラレンズ前方に配置したフィルタホイールにてバンドパスフィルタを1秒ごとに切り替えて各波長の蛍光画像を連続的に撮像した。なお,重ね合わせ配置の都合上,ガス透過性を向上するために酵素固定化メッシュの糸間隔を従来の二倍に広げている。本システムの定量特性は,EtOHにおいて0.5〜300 ppm,AcHにおいて0.2〜5 ppmとなり,呼気計測に十分である一方,経皮ガスイメージングには感度向上が必要であった。図6(b)は呼気をタンデム配置したメッシュに負荷して得られたガスイメージングシステムの微分シグナル経時変化である。従来系と同様にガス負荷による出力変化と,ガス負荷停止によるシグナルの初期値への回復が観察された。また,各シグナルのピークより定量した呼気中EtOHおよびAcH濃度は,ガス検知管の指示値と一致した。以上の結果より,光の特性(波長分離)に基づくバイオ蛍光での複数ガス計測の可能性を示した。今後,1枚のメッシュに複数の反応系を組み込むことで空間分解能を向上し,酵素反応系の最適化により感度を向上すれば,経皮VOCsの同時イメージングも可能であると考えられる。

6. おわりに

生物・無生物の区別なく,物体からはVOCの放出が生じ,内部化学状態についての非破壊的・非侵襲的な評価法に発展する可能性がある。また濃度の時空間評価は,ガス発生源の探索に有用で多くの応用展開が考えられる。バイオ蛍光法は,多くのガスセンシング/イメージング技術の中で,酵素の基質特異性に基づくガス選択性と感度を併せ持ち,水分に影響されにくいという特徴を有しており,生体から放出されるガスサンプルのような希薄なガス成分の混合体に適した測定方法である。また,酵素を交換することで異なるガス成分の選択的検出が可能になるという展開性を有する。今後,疾患スクリーニングや代謝評価など,医工学領域における実用化を目指して研究開発を進めていく。

参考文献
1)Iitani, K.; Ichikawa, K.; Toma, K.; Arakawa, T.; Mitsubayashi, K. Biofluorometric Sniffing Technologies for Measuring and Imaging of Human-Borne Volatile Markers. In Comprehensive Analytical Chemistry; Elsevier, 2024; Vol. 110, pp. 99-156.
2)Iitani, K.; Toma, K.; Arakawa, T.; Mitsubayashi, K. Anal. Chem. 2019, 91, 9458-9465.
3)Arakawa, T.; Suzuki, T.; Tsujii, M.; Iitani, K.; Chien, P.-J.; Ye, M.; Toma, K.; Iwasaki, Y.; Mitsubayashi, K. Biosens. Bioelectron. 2019, 129, 245-253.
4)Iitani, K.; Ichikawa, K.; Toma, K.; Arakawa, T.; Mitsubayashi, K. ACS Sens. 2024, 9, 5081-5089.
5)Iitani, K.; Toma, K.; Arakawa, T.; Mitsubayashi, K. ACS Sens. 2020, 5, 338-345.
6)Iitani, K.; Miura, R.; Lim, J.; Ishida, R.; Ichikawa, K.; Toma, K.; Arakawa, T.; Mitsubayashi, K. ACS Sens. 2024, 9, 6741-6749.

■Bioimage sensing technology for gaseous molecules and applications of transcutaneous vapors
■①Kenta Iitani ②Geng Zhang ③Kenta Ichikawa ④Kohji Mitsubayashi
■①Lecturer, Laboratory for Biomaterials and Bioengineering, Institute of Integrated Research, Institute of Science Tokyo ②Project Researcher, Laboratory for Biomaterials and Bioengineering, Institute of Integrated Research, Institute of Science Tokyo ③Assistant Professor, Laboratory for Biomaterials and Bioengineering, Institute of Integrated Research, Institute of Science Tokyo ④Professor, Laboratory for Biomaterials and Bioengineering, Institute of Integrated Research, Institute of Science Tokyo

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