ジョーンズベクトルで記述できる全ての偏光・位相を生成する液晶空間光変調器

励起側にPMCを用いた計測事例を示す。分子の向きを評価するパラメーターとして,観測面内の配向成分が水平方向,垂直方向のどちらを向いているかを評価するパラメーターRxy,および,面内配向成分と面外配向成分を比較するためのパラメーターRrlを用いて評価した。ここで,水平偏光,垂直偏光,ラジアル偏光励起で得られたSHG光強度をIxIyIzとすると,

式⑻

式⑼

と計算できる。ただし,

式

図11 SHG顕微鏡とPMCを用いた面外方向に配向したコラーゲン繊維の立体配向計測
図11 SHG顕微鏡とPMCを用いた面外方向に配向したコラーゲン繊維の立体配向計測

である。その結果,図11のようにヒトアキレス腱の垂直断面試料表面の立体的な線維配向の分布が可視化された。本試料は本来,観測面外へ一様に配向しているが,切断時の応力による配向の乱れが検出されている。SHG顕微鏡の光学断層観察を用いると,切断の影響の及ばない内部においては観測面外配向がより強く観察された。

図12 単一分子蛍光の偏光分布フィルタリングを用いた立体分子配向計測
図12 単一分子蛍光の偏光分布フィルタリングを用いた立体分子配向計測

次に,観測側に設置したPMCによる立体配向計測結果を図12に示す。図12(a)はガラス基板上に散布した単一蛍光分子(DiI)の蛍光像で各分子の配向はランダムである。そこから発する蛍光を,水平,垂直,ラジアル偏光の3つの偏光成分をPMCで選択的に検出した結果,それぞれの計測モードでしか観察されない分子が見つかり,それぞれX, Y,およびZ方向に配向している分子であると結論付けた。なお,ラジアル偏光検出モードは水平,垂直偏光も若干検出するため,得られるデータ間にはクロストークがある。

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