【主張】ノーベル賞授賞式、ダブル受賞が示す日本の存在感と底力

著者: オプトロニクス 編集部

ノーベル賞の授賞式が10日夕刻(日本時間11日未明)、スウェーデンの首都ストックホルムで開催され、医学・生理学賞を受賞した坂口志文氏(大阪大学)、化学賞を受賞した北川進氏(京都大学)の両氏が出席し、その晴れがましい様子が報道されている。今年は、2015年に梶田隆章氏(物理学賞)、大村智氏(医学・生理学賞)の二人が受賞して以来10年ぶりとなる日本人のダブル受賞でもあり、国内では研究成果の国際的な評価とともに、基礎科学研究の重要性をあらためて訴える契機としても大きな注目を集めている。

今回の受賞は、自然科学分野に限れば2021年の眞鍋淑郎氏以来で、日本国籍保有者としては19年の吉野彰氏以来6年ぶりとなる。ここ十数年を振り返ると、08年は米国籍の南部陽一郎、小林誠、益川敏英、下村脩の各氏の4人が受賞し、21年の真鍋氏の受賞まで14年間のうち実に9年は日本人が受賞している。この間、2年連続で受賞者無しの年は無く、日本はノーベル賞輩出国と言っても過言ではなかったが、その後は受賞の間隔こそ広がったものの、国内外で着実に育まれてきた研究が次の飛躍の芽として蓄積されつつあり、今後の新たな成果への期待が高まっている。

ノーベル賞授賞式 2025年 © Nobel Prize Outreach. Photo: Clément Morin

現在の日本の科学技術政策が将来もノーベル賞受賞者をかつてのように輩出する環境をつくっているとは言い難い。Top10%論文数がよく引き合いにだされるが、これは該当の論文の被引用数が、同じ分野・出版年・ ドキュメントタイプで 上位 10% に入る論文の数のことで、Top10%論文に入ると言うことはその分野の先行研究として中核をなしていることを意味し、当然、ノーベル賞対象となる論文はこの中に含まれている事がほとんどとなる。

その推移をみると、日本の存在感が相対的に変化してきたことがうかがえる。2000年以降10年ごとにたどると01年から3年間では日本は米、独に次ぐ3位であった。論文評価にかかる年月を鑑みれば、08年以降の受賞者数の増加はここに現われているといって良い。しかし、11年からの3年間では中国などに抜かれ7位、21年からの3年間となると韓国等にも抜かれ13位に後退している。

年々増加する研究費用に比べて日本政府の研究費支出の伸びが追いついてないという指摘もある。博士課程やポスドクの不安定な待遇、理科系人材育成の脆弱な環境、国立大学法人化に伴う運営経費の縮小など要因にはことかかない。このタイミングで科学技術政策担当の特命大臣の経験がある高市早苗氏の政権が発足し、所信表明演説に「新技術立国」として科学技術・人材育成に資する戦略的支援を行い、公教育の強化や大学改革も進めると表明しているのは明るい兆しである。

ノーベル賞晩餐会 2025年 © Nobel Prize Outreach. Photo: Anna Svanberg

高市首相の所信表明における「新技術立国」のくだりは経済安全保障と成長戦略の文脈で述べられているが、ノーベル賞を毎年のように輩出する科学技術政策が、日本の経済成長や安全保障を支えるという認識が政府内でも広がるなか、文部科学省、経済産業省の連携の取れた政策に大いに期待したい。加えて欧米のように防衛関連研究費の民生利用も今後重要性が増してくるはずである。

集中と選択による研究費の配分は、基礎科学分野においては成功しないというのはもはや定説となっている。政府が先の見える先端技術に研究支出を重点配分するなか、防衛関連研究費に対する民生とのデュアルユースによる総合的な研究費のパイの広がりが、政府の目利きから外れた未知の分野への研究費配分に道を開くことになる。文科省のみならず、経産省、防衛省を含む政府全体が連携した科学技術政策が求められている。

ストックホルムで燕尾服を着た日本の研究者がメダルを受け取る、そうした誇らしい光景を毎年のように見られる科学技術政策を期待し、両氏のノーベル賞受賞を改めてお祝いする。

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