電気通信大学と米フロリダ大学の研究グループは、ディープフェイク画像の真正性を確認するための「再撮影検出」を、光学フィルターを使って回避する新たな攻撃手法を実証するとともに、その対策となるDual-Pixelセンサーを用いた検出方式を開発した(ニュースリリース)。

近年、生成AIによるディープフェイク画像の拡散が社会問題となる中、AIで生成した画像と実際にカメラで撮影した画像を区別する技術の研究が進んでいる。画像の来歴情報(Provenance)を保証する標準規格「C2PA」では、撮影時にカメラ内でデジタル署名を付与することで、実際のカメラで撮影された画像であることを証明する。
一方、モニターなどに表示したディープフェイク画像をC2PA対応カメラで撮影すれば、ディープフェイクでありながら「カメラで撮影した画像」として署名を付与できる。この「再撮影攻撃」への対策として、スマートフォンなどに搭載される赤外光を利用したLiDARなどの深度センサーを使い、撮影画像と奥行き情報の整合性からモニターの再撮影を判別する手法が提案されてきた。
研究グループは今回、この検出方式を物理的に回避できる新たな攻撃手法を実証した。用いるのは、可視光を透過する一方、特定の角度で入射した赤外光を反射する「ホットミラー」と呼ばれる光学フィルター。ホットミラーをスマートフォンの前に配置することで、カメラが受ける可視光と、深度センサーが利用する赤外光の光路を分離する。これにより、カメラにはディープフェイクを表示したモニターを撮影させながら、赤外測距センサーには攻撃者が用意した別の空間の奥行き情報を計測させることができる。
その結果、撮影画像と奥行き情報が見かけ上整合し、本来は再撮影として検出されるディープフェイク画像を正規の撮影画像のように扱わせることが可能になる。実験では、この原理により赤外測距センサーを利用した再撮影検出方式を100%の成功率で回避できることを確認した。
研究グループは、この攻撃が可能になる原因が、画像撮影には可視光、奥行き計測には赤外光と、異なる光を利用している点にあることに着目。対策として、スマートフォンやデジタルカメラのオートフォーカスなどに広く用いられているDual-Pixel(DP)センサーを利用した新たな再撮影検出方式を構築した。DPセンサーは各画素が左右に分割された構造を持ち、通常の画像に加えて左右の視点から見たDP画像を取得できる。この視差から奥行き情報を復元し、撮影画像との整合性を検証することで再撮影を検出する。
画像撮影と奥行き情報の取得を同一のセンサー、同一の可視光で行うため、ホットミラーを使って両者の光路を分離し、それぞれに異なる空間を提示する今回の攻撃を適用できない。評価実験では、この方式によって再撮影を100%の精度で検出できることを確認した。
DPセンサーはすでにスマートフォンやデジタルカメラに広く採用されている。研究グループは、今回の方式がソーシャルメディアや報道などで扱われる画像・動画の真正性を確保する基盤となり、ディープフェイクによる誤情報の拡散防止につながるとしている。



