京大ら,赤外線で原子が同じ方向に運動する現象発見

京都大学と筑波大学は,赤外線を当てることでナノ結晶と呼ばれる極めて小さな結晶の表面で生じる電子の集団的な運動を生じさせ,それが硫化銅ナノ結晶の結晶中の原子が同じ方向に協同運動する現象を引き起こすことを発見した(ニュースリリース)。

局在表面プラズモン共鳴(LSPR)はナノサイズの材料の表面の電子が集団的に運動する現象で,デバイス,触媒,センシングなど様々な分野に応用されている。

金属と半導体の両方の性質を併せ持つ物質である硫化銅(CuS)は従来のLSPR緩和に加えて1/1000以上遅いLSPR緩和が知られているが,その原因の解明はされていなかった。

CuSはp型の半導体であり,CuSナノ粒子はホールの集団振動に由来するLSPRバンドを赤外域に示す。研究グループはCuSナノ粒子を合成し,光照射による電子回折パターンのシフトを光照射下での電子線回折測定により観測した。

その結果とシミュレーションにより,銅原子の変位が電子回折スポットのシフトを引き起こすことがわかった。この変化は,LSPR励起に伴なう振電相互作用の理論計算からも支持された。

また,超高速時間分解電子回折測定で,LSPR励起後のCuSナノ粒子の原子の移動の経時変化をCuSナノ粒子膜の電子回折パターンのうち,110の回折リングを使用して800nmレーザーでLSPRバンドを励起した。

すると110回折リングの強度が変化し,LSPRバンドの9.4±3.1ps励起で約6%減少した。強度シフトのほぼ半分は45±16psの時定数で回復したが,残りの半分は低いままで,測定時間内に回復しなかった。

この結果は,LSPR励起直後に大きな格子膨張が起こり,その後準安定結晶構造に変化したことを示しており,上記の光照射下での回折スポットの変化と一致する。回折強度の減少は,バンドギャップ励起(400nm照射時)では観察されなかった。

また,LSPR励起(800nm照射時)が長距離の構造周期性を変えることなく単位胞内のイオン変位を誘発し,Cu周りの局所的な対称性がD3hからC2vへ低下したことを示した。

CuSナノ粒子の薄膜を櫛型電極上に作成して赤外光を照射するとLSPRの励起により,膜の導電率が低下した。さらに,照射した光の波長に対する導電性の変化をプロットすると,CuSのLSPRピークが再現された。

したがって,光照射による導電率の低下は,LSPRによって引き起こされる結晶構造の変化に起因すると考えられた。

これについて研究グループは,不可視の光学センサーなど,革新的な光学デバイスの開発につながる成果だとしている。

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