東京都板橋区と東京大学宇宙線研究所は2026年10月2日、板橋区立グリーンホールで開催された「第13回板橋オプトフォーラム」において、地域産業の持続的な発展と科学技術を支える人材の育成を目的とした連携協定を締結した。

締結式には板橋区の坂本健区長と東京大学宇宙線研究所の荻尾彰一所長が出席した。両者はそれぞれが持つ人的・知的資源などを生かし、地域産業の振興や科学技術人材の育成につながる取り組みを進めていく。
板橋区と宇宙線研究所の関係は今回の協定から始まったものではない。これまでも「いたばし産業見本市」で、同研究所の研究者による講演やワークショップ、学生スタッフの派遣、スーパーカミオカンデで使用される光電子増倍管などの展示を行ってきたほか、区の学芸員との共同研究などを通じて連携を重ねてきた。
さらに板橋には、宇宙線研究との歴史的な接点がある。現在、史跡公園として整備が進められている旧理化学研究所板橋分所では、1947年から約50年間にわたり宇宙線の連続観測が行われていた。こうした地域に残る科学技術の歴史も、現在の東京大学宇宙線研究所との連携につながる背景の一つとなっている。
今回の協定では、こうした従来の個別の取り組みをさらに発展させ、宇宙線研究所と板橋区が持つ資源を活用しながら、地域産業の持続的な発展や科学技術を支える人材育成など、分野横断的な事業で連携することを目指す。板橋区は光学・精密機器産業が集積する地域でもあり、基礎科学の最前線を担う研究機関との継続的な交流が、企業や次世代人材に新たな接点をもたらすことも期待される。
締結式に続いて荻尾所長は、「光でみる、光をみる―宇宙線観測最前線―」と題して基調講演を行った。宇宙線研究所では、宇宙線をはじめニュートリノ、ガンマ線、重力波などの観測を通じ、宇宙の成り立ちや素粒子の性質を探る研究を進めている。
宇宙線やニュートリノなどの観測では、微弱な光を捉える光検出技術が重要な役割を担う。実際、これまでの板橋区との連携ではスーパーカミオカンデの光電子増倍管も紹介されており、「光」を基盤産業の一つとする板橋と、光を駆使して宇宙を観測する研究機関との接点が、今回のフォーラムでも象徴的に示された。
板橋オプトフォーラムは2014年度から開催されており、区内を中心とする光学・精密機器関連企業と、日本光学会、理化学研究所、宇都宮大学などの研究機関が集まり、研究会、展示、交流を通して産学連携を促進する場となっている。今回の第13回では、企業12社による展示に加え、東京大学宇宙線研究所を含む8団体による大学・研究機関のポスター展示なども行われた。
今回の協定締結により、これまでイベントや共同研究を通じて培われてきた板橋区と宇宙線研究所の関係は、継続的な連携へと新たな段階に入った。地域に蓄積する光学・精密技術と最先端の基礎科学をどのようにつなぎ、産業振興や次世代の科学技術人材の育成へ広げていくのか、今後の取り組みが注目される。




