東京科学大学の研究グループは,電源装置を用いない電気化学発光法を開発し,溶液中のアミン化合物の検出応用に成功した(ニュースリリース)。
電気化学反応による発光現象(電気化学発光)に基づく分析法は,高感度,低ノイズ信号,時間的・空間的な制御が容易であることから,優れた検体分析手法として知られており,医療用診断技術としても重要とされている。
現在用いられている電気化学発光分析装置の多くは,電気化学反応を駆動するための電源,電極を備えた電気化学セル,発光を検出する検出器などから構成される。近年は装置の小型化・ポータブル化が進んでいるが,通常は電気化学反応を駆動するための電源が必要不可欠となっている。
この研究では,樹脂モノリス製多孔質材料を充填した流路を備えた電気化学セルを用いて,流動電位を発生させてバイポーラ電極を駆動した。駆動においては低濃度の電解質を含むアセトニトリルと水との混合溶液をポンプで送液し,約10Vの流動電位を観測した。次に,酸化反応が起こる上流側の電極に電気化学発光のための発光体を固定化し,光を透過する石英製のセルを用いて溶液を送液した。
無給電電気化学反応装置による共反応物型電気化学発光の検討においては,分析対象としてアミン化合物を用いた。アミン化合物が存在する際に発光するベンゾチアジアゾール-トリフェニルアミン化合物(BTD-TPA)を電極に固定し,アミン化合物の検出を試みた。
具体的には,トリプロピルアミン(TPrA)などの脂肪族アミン化合物とBTD-TPAがそれぞれ電極上で酸化された後,生じる活性種同士が電子移動反応することによりBTD-TPAが発光する。この原理に基づき,1mmol/Lの脂肪族アミン化合物を含む溶液を送液したところ,光電子増倍管によりBTD-TPAの発光を検出することに成功した。
また,送液の体積流量を増大させると,流動電位が大きくなり,発光強度が増大するため,デジタルカメラを用いて発光を観測することができた。さらに,ポンプ送液の代わりにシリンジを用いて手押し送液した場合でも電気化学発光を観測することができ,まさに電力を用いない電気化学発光分析法を実現した。
研究グループは,今後検出感度の向上や,類似構造を持つ検体を特定できる実用的な分析手法としての確立を目指すという。また,電源装置を用いない電気化学反応法のさらなる応用として,ファインケミカルの電解合成や環境浄化分野などでの利用を検討するとしている。
