東大など、サンゴ白化の異なるメカニズムを発見

東京大学と神戸大学は、造礁サンゴであるウスエダミドリイシを用いた共同実験から、高温による白化と栄養不足による白化では、共生藻の光合成との関係が大きく異なることを確認した(ニュースリリース)。

サンゴ礁は、多くの海洋生物に生息場所と食物を提供する重要な生態系であり、その形成を担う造礁サンゴは海の環境を支える基盤的存在である。ウスエダミドリイシはその代表的な種で、体内に褐虫藻と呼ばれる共生藻類を持ち、藻類が行なう光合成によって得られる有機物に大きく依存している。この共生関係が崩れ、褐虫藻が失われる現象が「サンゴの白化」であり、近年、地球規模で深刻化している。

白化の主な原因として知られるのは高温ストレスである。高水温によりサンゴや褐虫藻が酸化ストレスを受け、褐虫藻の光合成系が破壊されることで、急激な白化が引き起こされる。一方、自然界では水温上昇と無関係に起こる白化も報告されており、栄養不足によってサンゴが体内の褐虫藻を消化することでも白化が生じると考えられている。しかし、これら2種類の白化を同一条件下で比較した研究はこれまで行なわれてこなかった。

この研究では、東京大学の髙木助教によるサンゴ飼育・実験技術と、神戸大学・大阪大学の嶋川助教による光合成解析技術を組み合わせ、ウスエダミドリイシを実験室で長期間飼育した。沖縄県で採集した3つの群体を7か月間馴致した後、給餌を停止し、常温(26℃)と高温(31℃)の条件で1か月間飼育した。その結果、両条件で白化が進行したが、その様式には明確な違いが見られた。

高温条件では、褐虫藻の光合成活性が低下し、光合成系が壊れることで一斉に白化が起こった。一方、常温条件では、褐虫藻の光合成機能が維持されたまま、白化が徐々に進行した。さらに、常温での白化の進み方には群体差があり、白化しやすいサンゴほど成長が速い傾向が確認された。

(図)2つの異なる温度条件におけるサンゴ白化の様子
(表)実験期間におけるサンゴ色調と褐虫藻の光合成活性との関係性

これらの結果から、栄養不足による白化は、必ずしもサンゴの衰弱を意味するものではなく、エネルギーを確保するためにサンゴが褐虫藻を消化する適応戦略である可能性が示された。栄養条件が改善すれば回復可能な白化であると考えられ、サンゴと褐虫藻の共生関係が極めて柔軟で複雑な仕組みを持つことが明らかになった。

この成果は、自然界で観測される多様な白化現象の理解を深める重要な手がかりとなり、今後のサンゴ礁保全や養殖技術の発展に貢献することが期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 東大、レーザーダイオードによる精密光照射で植物の光合成活性を最大化

    東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの研究グループは、スタンレー電気との共同研究により、レーザーダイオード(LD)を用いた精密な光制御が植物の光合成や成長を劇的に変化させることを明らかにした(ニュースリリース…

    2026.06.12
  • 東京農大など、シアノバクテリアの光合成を酵素で制御 緑色光利用の効率化に道

    東京農業大学、東京都立大学、東京科学大学、東京大学は、光合成微生物シアノバクテリアの集光アンテナ複合体フィコビリソームの機能が、導入する色素合成酵素の違いによって大きく変化することを明らかにした(ニュースリリース)。 シ…

    2026.06.05
  • 早大と岡山大、テラヘルツバイオフォトニクス実用化に向けた技術ロードマップを提示

    早稲田大学、岡山大学は、テラヘルツバイオフォトニクス研究の歴史と最新技術を整理し、分野の発展を妨げてきた本質的課題を体系的に分析した。さらに、顕微鏡技術や高感度センサーなどの新しい研究動向を整理し、医療・バイオ計測への応…

    2026.06.05
  • 植物と光の関係、光合成から次世代植物工場へ

    5月4日は「みどりの日」ー自然に親しみ、その恩恵に感謝する日として、植物や環境について考える機会でもある。植物の成長を支えているものの一つが「光」である。太陽光を受けた植物は、光合成によって二酸化炭素と水から糖やデンプン…

    2026.05.04
  • 東大、名工大、名大が光で細胞を自在に操る新技術をゼロから創出

    名古屋工業大学、名古屋大学、東京大学の研究グループは、光によって結合と解離を自在に切り替えられる小分子と人工タンパク質のペアを、ゼロから設計・創出する画期的な手法を開発した(ニュースリリース)。従来の光操作技術である光遺…

    2026.05.01

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア