東京大学の研究グループは、フェルミガンマ線観測衛星の最新データを解析し、我々が住む天の川銀河(銀河系)の中心方向から、約20ギガ電子ボルト(GeV)のガンマ線が、角度にして30度以上にぼんやりと広がって放射されていることを発見した(ニュースリリース)。

100年近くに渡り、宇宙の最大の謎の一つとして君臨する暗黒物質。様々な候補や仮説が提案されているが、なかでも有力とされるのがWIMPと呼ばれる新種の素粒子。2つのWIMP粒子が稀に衝突して対消滅する際に、GeV以上の高エネルギーガンマ線を放射すると期待され、天の川銀河の中心方向など、暗黒物質が密集している領域からのガンマ線が長年探索されてきた。
しかしガンマ線で空を見ると、銀河面などから、宇宙線や天体起源の強烈なガンマ線放射が観測されるため、そうした成分を丁寧に取り除き、微弱なシグナルを慎重に探す必要がある。
今回の研究では、天の川銀河の中心方向から60度の範囲で、銀河面に沿った領域を取り除いて解析が行なわれた。暗黒物質ハローからの放射が比較的強く、また銀河面からの強烈な天体起源の放射を避けることができる。
今回の研究では、最新の15年分のデータを利用し、天体起源の放射を慎重に除いたうえで、ハロー状の放射成分の有無を調べた。
その結果、20GeV付近で、球対称にぼんやり広がった放射成分があり、暗黒物質ハローが放射している場合に予想される形状とよく一致していることがわかった。さらにこの放射は20GeV付近で特に強く、それより低エネルギー、および高エネルギー帯域では急激に弱くなる。
一般に、天体起源のガンマ線は様々なエネルギーで比較的均等に放射され、このような強いエネルギー依存性は示さない。一方、陽子の500倍程度の質量をもつWIMPの対消滅から予想される依存性とはよく合致している。放射強度から見積もられる対消滅の頻度も、理論予想と概ね合致する。これらの理由から、今回発見されたハロー状の放射成分は、暗黒物質由来のガンマ線の有力な候補と言える。
これが事実ならば、暗黒物質の正体がWIMPであることが判明すると同時に、現在の素粒子物理学の標準理論に存在しない新粒子が発見されたことになる。しかし最終的に確立するまでには、まだまだ様々な検証や研究が必要。他の研究者の独立解析による検証や、天の川銀河のハロー中の矮小銀河など、他の領域からの対消滅ガンマ線の検出などが次のステップとなる。
研究グループは、今回の研究が、暗黒物質の正体解明の最初の突破口となることが期待されるとしている。



