東大、細胞内の構造と微粒子の動きを同時観察する顕微鏡を開発

東京大学の研究グループは、前方散乱光と後方散乱光を同時に定量する「双方向定量散乱顕微鏡」を開発した(ニュースリリース)。

ラベルフリー顕微鏡として広く用いられる定量位相顕微鏡(QPM)は、試料の屈折率分布に起因する前方散乱光を計測することで、細胞の乾燥質量分布小器官などの構造を可視化できる手法。しかし、光の量子的なゆらぎ(光量子雑音)により感度に限界があり、高速に動く微粒子の検出は難しいとされている。

一方、干渉散乱顕微鏡(iSCAT)は後方散乱光を利用して微粒子を高感度に捉えられるものの、細胞全体の構造を包括的に計測することは困難。両者を同時に計測できれば、大きな構造と小さな粒子の動態を一度に捉えることが可能となり、細胞の多階層的なダイナミクスの理解につながる。

研究グループは、対向する照明光と共通の検出系を用い、前方散乱光と後方散乱光を同時に定量する顕微鏡を開発した。オフアクシスデジタルホログラフィによる空間周波数多重化技術を用いることで、一枚の画像から前方散乱光と後方散乱光を分離し、それぞれを定量的に画像化することに成功した。

生きた細胞の観察では、前方散乱画像が小器官などの大きな構造を明瞭に示す一方、後方散乱画像では前方散乱では検出できなかった微粒子の情報を捉えることができた。双方向の散乱光を捉えることで、前方散乱光の計測のみの場合に比べて検出信号範囲が約14倍拡大した。

さらに、前方・後方散乱強度の差を解析することで、微小脂質滴と考えられる100nm程度の細胞内微粒子の屈折率と粒径を定量することに成功した。こお手法は静止画の観察に加え、細胞内の構造や微粒子の時間変化を可視化することにも強みを持つ。この特性を用いることで、細胞死の過程で粒子の動きの活性度が時間変化する様子を定量できることも示した。

研究グループは、この成果は、細胞内の構造と微粒子の動態の関係を明らかにする新たな手がかりとなり、定量位相顕微鏡や干渉散乱顕微鏡といった既存のラベルフリー顕微鏡の応用範囲を広げるものだとしている。

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