FHIら,散乱型近接場光学顕微鏡で分解能1nmを達成

独マックス・プランク協会フリッツ・ハーバー研究所(FHI),分子科学研究所/総合研究大学院大学,スペインCIC NanoGUNEは,散乱型近接場光顕微鏡として,世界最良となる1nmの細かさで物質表面の局所的な光学応答を観察できる新しい技術を開発した(ニュースリリース)。

光学顕微鏡の回折限界を超える手法のひとつが,散乱型近接場光学顕微鏡(s-SNOM)。s-SNOMでは,金属探針の先端に光を集め,ナノスケールに局在した近接場を利用することで,通常の光では到達できない微小な領域を「照らす」ことができる。これにより,光の波長よりもはるかに小さな構造を観察することが可能になる。

しかし,これまでのs-SNOM技術では,空間分解能は通常10~100nm程度,最良の条件でも5~6nmが限界とされ,原子スケールの微細構造を光学的に観察するには不十分だった。これを超えるには,試料表面を壊すことなく探針をできるだけ近づけ,その時に形成される近接場をできるだけ精確に読み取ることが不可欠となる。

今回,研究グループはs-SNOMにおいて探針の振動振幅を従来の10分の1以下に抑える「超低振幅s-SNOM(ULA-SNOM)」を開発した。これは探針を1nm以下の小さな振幅で安定的に振動させ,空間的に強く局在した光(近接場)と物質の相互作用を高精度に検出するというもので,水晶振動子センサーを用いた周波数変調型の原子間力顕微鏡(FM-AFM)と,近接場と物質の相互作用に起因する弾性散乱成分を高感度に検出するロックインアンプの高次復調とを組み合わせて実現した。

実験は,超高真空かつ8Kの低温下で行なった。このような環境では,探針と試料の間にできる1nm程度のすき間をピコメートルレベルの精度で安定かつ精密にコントロールできる。

この極めて狭いすき間では,金属探針と金属表面との間にプラズモニックキャビティが形成される。この領域では光が非常に強く閉じ込められ,試料の微細な光学情報を増幅して観測できる。これによって,平坦な銀金属表面とその上に成膜した1原子分の厚さのシリコン薄膜の領域を顕微鏡像によって識別し,その試料を1nmの空間分解能で可視化することに成功した。

研究グループは,今回実証した技術とそれを踏まえた今後の更なる顕微鏡開発によって,ナノマテリアルやナノデバイスの精密な評価に加え,原子スケールの空間で光を制御する「オングストロームオプティクス」という光科学のフロンティアへの展開が期待されるとしている。

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