岡山大、光駆動プロトンポンプで体内のがん腫瘍を消去することに成功

岡山大学の研究グループは、光に反応して細胞内をアルカリ化させるタンパク質を利用し、マウス体内に存在するがん腫瘍を選択的に光で死滅させることに成功した(ニュースリリース)。

がんは日本人の2人に1人がかかる病気で、長年にわたり死亡原因の第1位となっている。現在の治療法では、がん細胞を死滅させる薬剤が主に使われているが、多くのくすりは狙ったがん細胞だけでなく周囲の正常な細胞にも作用してしまい、副作用が避けられないという課題がある。

この副作用は患者の生活の質(QOL)を大きく低下させるため、副作用を抑えた新しい治療法の開発が望まれている。研究グループはこれまで、副作用の少ないがん治療法の基盤として、特定の細胞だけを光で選択的に死滅させる技術を開発してきた。

具体的には、細胞内をアルカリ化する働きを持つ光感受性のタンパク質「アーキロドプシン3(AR3)」を動物の細胞に合成させ、光を照射することで狙った細胞でのみ自発的な細胞死(細胞の自死)が誘導されることを明らかにしている。

研究グループは、この技術をさらに発展させ、マウスの体内に存在するがん細胞を対象に選択的に光で死滅させることが可能かを検証した。

大腸がんや悪性黒色腫由来のがん細胞に遺伝子を導入しAR3を合成させた後、マウスに移植して腫瘍を形成させた。腫瘍に1時間の緑色光を照射すると、がん細胞の自死が始まった。一方で、がんの増殖を抑える働きを持つ免疫細胞には光による毒性はほとんどなく、正常な働きが維持されることが分かった。さらに、光照射後の腫瘍の大きさを測定すると、腫瘍体積は徐々に減少し、光を照射してから7日目にはほとんど消失した。

この結果から、がん腫瘍に光を照射することで個々の細胞の自死が誘導され、腫瘍全体が効率的に死滅することが示された。すなわち、生きたマウスの体内に存在するがん腫瘍を光で選択的に死滅させることに成功した。

今回開発された光がん治療法は、特定の細胞にだけ作用することが可能であり、将来的にはヒトのがんに応用することで、がん細胞のみを選択的に除去できる、副作用の少ない新しい光がん治療法の実現が期待されるとしている。

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