大阪公立大学の研究グループは,PCR法で標的DNAを増幅せずに,光照射だけで超高感度かつ迅速にDNAを分析する「ヘテロプローブ光濃縮法」を新たに開発した(ニュースリリース)。
研究グループでは,一本鎖DNAを修飾した金ナノ粒子(プローブAuNP)と標的ターゲットDNAを含む液滴の気液界面にレーザー照射することで,数zmol(10-21モル)の極微量の標的DNAとプローブAuNP表面のDNAの二重鎖形成を光誘導加速して高感度計測に成功していた。
しかし,二重鎖形成により形成されたプローブAuNP集合体が,ある程度大きく成長してから光圧と光発熱効果による対流が顕著となることを利用しており,蒸発による液面の変形などの影響で測定結果のバラつきが大きく,さらなる感度向上には光濃縮の高効率化と界面の安定化が必要だった。
研究グループは,蛍光染色した一本鎖の標的DNA(蛍光DNA)と選択的に結合する一本鎖DNAを修飾した,サイズや材質が異なる二種類のプローブ粒子を用い,選択性と濃縮効率を向上させた。
標的DNAを含む溶液に光照射し,標的DNAとプローブ粒子を光の力(光誘起力)とその力が引き起こす対流(光誘起対流)により局所的に濃縮させ,DNAの二重鎖形成を加速することに成功した。
5分間の光照射により大きさ約数十μmの集合体が形成され,その間隙に蛍光DNAが捕捉される。金ナノ粒子への光照射によって生じる光の熱(光熱効果)で二重鎖の結合を緩め,標的DNAの計測の選択性を高めることができる。
この手法の検出下限は7.37fg/μLであり,マイクロリットルレベルのゴマ粒程度の量の液体試料から1fg=10‐15g(フェムトグラム)のDNAを計測できるため,従来のDNA検出法であるデジタルPCR法(検出下限:約200fg/μL,通常2.5~5時間を要する)よりも1~2 桁高感度となるとう。
また,PCR法による増幅なしで,DNA中の1塩基の違いを高精度に識別することにも成功した。研究グループは,この研究結果について,がん等の遺伝子疾患の早期診断や食品・環境中の遺伝子検査の革新につながるものと期待されるとしている。