情報通信研究機構(NICT),名古屋工業大学,宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,大気ゆらぎの地上-衛星間光通信への影響を克服するための次世代誤り訂正符号の実証実験に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
NICTでは,地上-衛星間光通信の実用化に向けた研究開発を実施しており,実用化に向けた技術課題の一つとして, 大気ゆらぎの克服がある。そこで,1m光地上局とJAXAが運用中の光データ中継衛星搭載の光衛星間通信システム(LUCAS)を用いて,地上-静止衛星間光通信実験を実施し,大気ゆらぎが通信品質に与える影響を調査してきた。
調査の結果,大気ゆらぎが数ミリ秒〜数十ミリ秒のフェージングを引き起こし,このフェージングが誤りデータを連続して発生させることで,通信品質が劣化し不安定になることがわかった。こうした影響を克服する技術として光学系による補償技術と誤り訂正符号があるが,複雑な光学系の制御が不要となる点に着目し,誤り訂正符号を採用した。従来のReed Solomon符号などよりも高い誤り訂正能力を持つ,5G通信用途の5G NR LDPCと衛星放送用途のDVB-S2を含む次世代誤り訂正符号を用いて,誤りデータの訂正を実証する計画を進めてきた。
今回,1m光地上局とLUCASとの間の地上-静止衛星間光通信回線の60 Mbpsダウンリンクを用いて,5G NR LDPCとDVB-S2を含む次世代誤り訂正符号の伝送実験を実施した。その際に,フェージングによる誤りデータの訂正に向けて,インタリーバと誤り訂正符号の条件を調整した。この実験で得られた伝送実験データを解析した結果,大気ゆらぎのフェージングにより連続して発生した誤りデータの訂正の実証に成功し,5G NR LDPCとDVB-S2が従来よりも通信品質の向上に寄与できることを世界で初めて確認した。今回の実験で伝送した5G NR LDPCとDVB-S2は,高い誤り訂正能力だけでなく,ハードウェアへの実装容易性や,将来的な5G通信システムとの相互接続が可能である点で,地上-衛星間光通信への活用に期待が持たれている。
この成果は,地上-衛星間光通信回線の通信品質を向上させ,実用化を促進するものだという。これにより,現在地上で使用されている5G通信プロトコルと衛星放送の宇宙ネットワークへの適用が可能となる。今後,将来の地上-衛星間光通信システムにおける本技術の活用が期待されるとしている。




