名古屋工業大学の研究グループは,高速度偏光カメラで取得した複屈折データを用い,固体と液体の応力相互作用を光で計測する新手法を開発した(ニュースリリース)。
脳血管疾患は日本の死因第4位を占める深刻な病気であり,その発症メカニズムの解明には血管と血液の両者の応力場の関係性を理解する必要がある。
発症メカニズムの解明を目的として,血流と血管壁の相互作用を考慮する流体-構造連成解析による数値的研究が行なわれているが,両者の応力場を実験的に非定常かつ非侵襲的に計測することは困難であり,そのための手法はこれまで存在しなかった。
研究グループは,固体と液体の両応力場の可視化に向けて,高速度偏光カメラと円偏光光源を用いた計測システムおよび,模擬血管,模擬血液,拍動ポンプからなる循環系閉ループを構築した。模擬血液には,結晶性高分子とヨウ化ナトリウムの混合水溶液を使用した。
この溶液は,人間の全血と似たせん断減粘特性を示し,力の作用により複屈折を発現する特徴を持つ。さらにヨウ化ナトリウムの配合により液体と固体の屈折率を一致させ,模擬血管内の流れを良好に可視化できるように調整した。
模擬血管には,複屈折を発現する高分子ゲル材料を使用し,血管の弾性を再現した。拍動ポンプを用いて人体の血流を模した拍動流を生成し,その際の模擬血液と模擬血管の両応力場を可視化した。高速度偏光カメラによる計測データは,応力と比例関係にある複屈折δnとして取得される。
高速度偏光カメラで得られた計測データから,模擬血液および模擬血管において流量の増加に伴い複屈折量δnが増加する様子が観測された。また,複屈折の空間分布が理論的に計算された流体の応力分布と一致することが示され,この手法の妥当性が確認された。
拍動流の実験では,拍動に同期して模擬血液と模擬血管の応力が周期的に変動する様子が捉えられ,特に模擬血管では弾性に起因する応答遅れが確認された。
研究グループは,この手法は,くも膜下出血などの脳血管疾患のメカニズム解明や,数値計算の信頼性検証などに役立つ新たな基盤技術として期待されるとしている。
