京大ら,電子効率を大きく高めた光触媒構造体を形成

京都大学,シンガポール国立大学,シンガポール南洋工科大学,シンガポール材料技術研究所は,電子移動を最適化した共有結合性有機構造体(COF)を用いて,光の利用効率を大きく高めた光触媒活性COFの形成に成功した(ニュースリリース)。

通常,光励起に伴う電子状態は一重項状態か三重項状態のいずれかになる。シングレット状態は短距離走者のように素早く反応し,後に続く電子移動によく変換されるが,その寿命は短い一方で,トリプレット状態はより遅く,エネルギーそのものを効率的に伝達する。

これらの状態を相互に変換する試みも盛んに行われているが,両者を連携させて太陽エネルギーをより有効に活用するべく今回の研究のCOFは設計されている。

このCOFは,従来のCOFとは異なり,光によって生成される短寿命の一重項励起状態と長寿命の三重項励起状態の両方を効率よく捕捉する構造を有している。電荷分離を経た電子輸送・励起エネルギの物質内移動が共に効率よく機能し,効率的な光触媒反応を引き起こすことができた。

さらにこのCOFは低エネルギーの赤色光でも機能し,金属や追加の添加剤を必要としない。今回用いたCOFは,電子供与性-電子受容性が相互に結合し,それぞれが積み重なったD―A型構造により,可視光領域から近赤外(NIR)領域まで,非常に広い光吸収範囲を示す。

H2P-BT(OMe)2-COFは,NIR領域となる約1000nmまでの光子を効果的に吸収できる。さらにD-A COF中の高密度に配列したポルフィリンおよびベンゾチアジアゾールユニットは,電子移動経路における複数の酸化還元中心として機能し,広範なポルフィリンπアレイはエネルギー移動経路における反応ハブとしても機能していることが明らかとなった。

時間分解マイクロ波光伝導度(TRMC)測定によってこの電荷分離後の再結合過程を含めた直接観測が行なわれ,光生成電子と正孔がCOF内の異なる領域に閉じ込められ,再結合によって再度形成される励起状態から光を発してエネルギーを失う無輻射失活によるエネルギー損失が低減されていることが明らかとなった。

生成された電荷は,長寿命の三重項励起子と共に効率的な化学変換・触媒反応に用いられていることも明らかに,また,近赤外領域の光吸収に伴う触媒活性は深赤色LED光照射下で行なわれ,このCOFが極めて高い有機カップリング反応活性を示すことが明らかとなった。

研究グループは,二状態最適化COFともいうべき設計戦略は,エネルギー利用効率の最適化を図るうえで重要な戦略となるとしている。

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