大阪大学の研究グループは,入手容易な市販原料であるアニリン,キノン,ナフトール類を用いて電解合成を行なうことで,世界で初めて簡便・安全・低コストな非対称ヘテロ[8]サーキュレン骨格の構築に成功した(ニュースリリース)。
[8]サーキュレンは,8つのベンゼン環が輪のようにつながった構造を有する分子で,広いπ共役系を持つ。中でもヘテロ[8]サーキュレンは,窒素(N)や酸素(O),硫黄(S)などといったヘテロ原子の種類や数,導入する位置を変えることでπ共役骨格の電子的・光学的・化学的性質を自在に調整でき,有機EL,有機トランジスタ,有機太陽電池,液晶材料,エネルギー関連材料など幅広い分野での応用が期待されている。多様なヘテロ[8]サーキュレンがデザイン可能なものの,実際は3つのタイプの合成が報告されているのみだった。
これはヘテロ[8]サーキュレン合成法が,多段階反応による低収率,高温などの過酷な条件,高価な金属試薬や大量の酸化剤の使用を必要とし,官能基及び位置選択性の問題を避けるために対称な構造を有する原料を用いることが一因だった。そのため既存骨格の修飾による機能調整が研究の主流となり,新しい骨格や非対称構造の探索はほとんど研究されてこなかった。
今回研究グループは,環境調和性と高い化学選択性が期待できる有機電解合成に着目した。これまでに研究グループが開発してきたヘテロ環を含むヘリセンやその誘導体の電解合成法を応用し,5つの6員環と3つの5員環からなる新しいタイプ(Type Ⅳ)の非対称型ヘテロ[8]サーキュレンの合成手法を設計した。この方法は市販原料からワンポットで6本の新しい結合を形成でき,効率的かつ簡便となっている。
得られた非対称型ヘテロ[8]サーキュレンについては,X線結晶構造解析・吸収スペクトル測定・密度汎関数理論計算などにより構造・光学・電子特性を詳細に評価した。特に,この分子は低還元電位のカルバゾール供与部位と電荷輸送・電子注入性を持つベンゾビスベンゾフラン受容部位を兼ね備えており,有機光触媒としての機能が期待された。
実際,非対称型ヘテロ[8]サーキュレンにLED光を照射すると有機光触媒として機能し,遷移金属フリーな条件下にて,クロスカップリング反応を最大97%の高収率にて促進することを見出した。
研究グループは,この電解合成の副生物は水のみであることから,環境にも低負荷なπ共役分子の合成方法として,有機太陽電池,液晶材料など幅広い分野での応用が期待されるとしている。




