東京科学大学と広島大学は,マイクロアクチュエータを用いた機械チューニング技術によりテラヘルツ(THz)帯通信デバイスの性能改善に成功した(ニュースリリース)。
300GHz帯や150GHz帯といった高周波領域(テラヘルツ帯)は,大気による減衰が比較的少なく,安定した伝搬が可能なため,この帯域に対応した通信モジュールの研究開発が世界中で進められている。
しかし,このような高周波領域では,製造に伴うモジュール構造の機械的誤差が問題となる。300GHz帯では波長が約1mmと短くなるため,チップからアンテナに至るまでのデバイス性能に顕著な影響を及ぼす。そのため,性能変動を抑えるための補償機構が求められる。
また,300GHz帯は,一般的なCMOSプロセスにおけるトランジスタの最大動作周波数を超えており,スイッチの構成や能動的なチューニング機構の実装が困難。特に,従来のような電子的な制御手法では対応が難しく,新たなアプローチが必要とされている。
研究グループは,テラヘルツ帯の電磁波が電波と光の中間に位置する周波数帯にあることに着目。具体的には,光学カメラにおいて用いられる,レンズを動かしながら焦点距離を調整することで特定距離からの受信信号(光)の強度を最大化する技術の応用を考えた。
応用例としてチップとアンテナを接続する遷移構造である導波管変換器内部において,反射鏡の役割を果たすバックショートを,導電性を有するフレキシブルメンブレンで構成。その位置を制御するために,1μm以下の精度を持つインパクトドライブ方式のマイクロアクチュエータを導入した。それにより,スライダー部を微小に駆動させ,メンブレンを押し込むことで,反射鏡の位置を高精度に調整可能とした。
その結果,250GHz帯導波管変換器におけるインピーダンスのチューニングが可能であることを実証し,機械的チューニングによる性能補償技術の有効性を示した。
このチューニング技術は,超高周波・短波長ゆえに製造誤差の影響が大きくなるテラヘルツ帯に対応する製品性能のばらつきを抑え,信頼性の高い通信デバイスの実現を可能にするものだとしている。特に,CMOSトランジスタが性能を十分に発揮できない300GHz帯などにおいて,電子的手法に代わる新たな調整技術として実用性が高いという。
この技術を他の導波管構造や異種材料モジュールにも展開することで,Beyond 5G/6G時代に向けた高い性能・信頼性を有するミリ波・テラヘルツ波システムの構築に貢献し,テラヘルツ技術の社会実装を加速させる基盤技術となることが期待されるとしている。




