科学大,粘度測定を実現する蛍光色素の設計指針確立

東京科学大学の研究グループは,凝集誘起発光色素(AIE色素)の粘度応答性発光を実験と理論の両面から系統的に調査し,従来の分子ローターと呼ばれる蛍光粘度センサーよりも高感度な分子の設計指針を確立した(ニュースリリース)。

希薄溶液中無発光で固体状態になると強発光するAIE色素は,粘度応答性を示すことが知られている。しかし,発光性を調整するメカニズムが複雑であり,従来の分子ローターとの性質の違いや,高感度センサーの設計指針は十分に検討されていなかった。

今回の研究では,研究グループがこれまでに開発してきた典型的なAIE色素と,従来の分子ローターの蛍光特性を同一条件で比較することにより,低粘度領域で高感度になるAIE色素を特定した。

さらに理論計算から,大きな粘度応答性を得るためには,蛍光発光に関係する励起一重項状態と蛍光消光に関係する円錐交差の間の活性化エネルギーが小さく,かつ円錐交差付近で起こる構造の体積変化が大きいことが条件であることを明らかにした。

つまり,粘度応答性の高いAIE色素を設計する上では,活性化エネルギーが小さく,かつ円錐交差への到達に大きな構造変化を伴う分子構造を有することが望ましいという設計指針が導かれたと言えるという。

研究では,AIE色素における粘度応答性のメカニズムを,理論計算と実験の両面から定量的に解析し,従来の分子ローター型色素とは異なる応答の原理を明確に示した。特に,構造変化と応答性の関係をポテンシャルエネルギー面(PES)に基づいて整理することで,粘度応答性を構造情報から予測できる可能性を明らかにした。

この成果は,AIE色素の粘度応答性を事前に評価・比較するための設計指針をもたらし,今後の分子開発や基礎物性研究に有用な知見を提供するもの。研究グループは,今後は,細胞膜の流動性の解析や細胞内の粘度測定,病態診断などを可能にする,AIE色素を基盤とした新規な蛍光粘度センサーを開発する予定だとしている。

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