立教大学の研究グループが発表した総説論文「配位子保護金属クラスターを用いた三重項–三重項消滅フォトンアップコンバージョン:性能向上のための戦略」が,アメリカ物理学会(AIP)の学術誌に掲載され,注目論文に選出された(ニュースリリース)。
三重項–三重項消滅に基づくフォトンアップコンバージョン(TTA-UC)は,低エネルギーの光子を,より高エネルギーな光子へと変換する光物理過程であり,光エネルギーを有効活用できる。
特に,TTA-UCは太陽光のような低照度・非コヒーレント光でも駆動することから,たとえばペロブスカイト太陽電池などの次世代太陽電池との組み合わせによる光電変換効率の向上,長波長光を駆動源とする人工光合成や光触媒反応の実現に加え,バイオイメージングや光線力学療法といったバイオフォトニクス分野への応用も期待されている。
研究グループは2021年,世界で初めて配位子保護金属クラスター(LMC)がTTA-UCにおいて優れた三重項増感剤として機能することを実証した。LMCは原子レベルで構造・組成が明確に規定された分子性ナノ物質であり,その電子構造や安定性は「超原子」という概念で記述される。
特に,金(Au),銀(Ag),銅(Cu)などの貨幣金属に由来する強いスピン–軌道相互作用により,三重項生成効率が非常に高く,TTA-UCへの適性が極めて高いことが明らかとなってきた。今回の論文では,同グループが主導して得られた一連の知見をもとに,TTA-UC性能の向上を導くLMCの設計戦略が紹介されている。
・三重項生成とエネルギー移動の高効率化
様々なLMCの励起三重項状態のエネルギーや生成効率などの物性指標を定量的に評価し,それらがUC効率や閾値光強度に与える影響を系統的に議論している。
・分子設計に基づく性能向上戦略
総説論文では,LMCのTTA-UC性能を飛躍的に向上させるための以下の設計指針が,具体的な構造例とともに示されている。
・超原子ユニットの融合(ロッド化)
・ヘテロ原子の導入(合金化)
・三重項媒介配位子の導入
研究グループは,この論文は,TTA-UCのさらなる高性能化にとどまらず,光エネルギー変換分野の将来展望に示唆を与えるものであり,今後に指針を与えることが期待されるとしている。
