京都大学,香港城市大学,中国QXP Technology Inc.は,光子がさまざまな波長の対となった量子もつれ状態を,集積化可能な半導体チップとして,光通信で主に用いられる6つのバンドのうち,5つのバンドにまたがる世界最大の波長域で実現することに成功した(ニュースリリース)。
光のさまざまな波長の対となった量子もつれ光源の活用が注目されている。これまでに,量子もつれ光源の発生方法としては,非線形光学結晶において生じる非線形光学効果が用いられてきた。ただこの方法では,非線形光学結晶の大きさが数cm程度と大きく,また一般的に集積回路の作製にもちいられているシリコン半導体素子ともその作製方法も大きく異なっているため,小型化,集積化が困難だった。
一方,光通信では,現在光ファイバの損失が小さい,波長1260nm〜1675nmの帯域が利用されている。研究グループは,この通信波長帯域の量子もつれ光源を,集積化可能な半導体チップとして,世界最大の波長域とモード数で実現していた。しかし,その帯域幅は105.3nmと通信波長帯域のごく一部に留まっており,その帯域の拡大が望まれていた。
今回,高度に設計されたリング共振器を用いる事で,さらなる広帯域化を実現した。光子発生用の素子としては,高屈折率コントラストガラスとよばれる材料を利用して作成されたリング共振器付き導波路を用いた。
この素子は,一般的なシリコン半導体素子を作成するのと同じプロセス・装置で作製することが可能。リング共振器の直径は約0.27mm。この共振器に波長1.55μmのレーザー光を入射すると,非線形光学効果によりポンプ光の2つの光子が,そのエネルギーの和が保存される形で,シグナル光子とアイドラー光子に変換される。
シグナル光子とアイドラー光子の対がどのような波長の組み合わせで発生しているかを確認するために,特定の波長の光子を非常に広い帯域から高い精度で選びだすことができるシステムを構築した。
その結果,シグナル光子・アイドラー光子の対として,世界記録を更新,1394.0nmから1745.9nmまでの帯域幅351.9nmの帯域,212の共振モードに渡って発生させることに成功した。この発生帯域は,光通信で用いられる6つのバンドのうち5つのバンドにわたるものとなっている。
さらに,同種のリング共振器を利用した半導体素子による達成していた従来の最大の値を大きく更新した。
研究グループは,今回実現した光源は,光量子コンピューターや,量子暗号の高度化,また光量子センシングなどの集積化にブレークスルーをもたらすものだとしている。




