横国大ら,蓄熱材料の結晶構造をX線回折により解明

横浜国立大学,パナソニック,大阪大学,高輝度光科学研究センター(JASRI),産業技術総合研究所は,空調などに用いられる蓄熱材料「TBABハイドレート(TBAB・26H2O)」の結晶構造を大型放射光施設SPring-8における高精度なX線回折実験により明らかにした(ニュースリリース)。

ハイドレートは水分子が分子やイオンを包接してできる氷状の物質。臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)ハイドレートは非可燃性でありながら適度な融点を持ち,空調や物流の分野での蓄熱材として期待されている。

TBABハイドレートには26水和物と38水和物の2種類が存在し,それぞれ異なる蓄熱特性を有している。比較的安定なTBAB·26H2Oハイドレートの結晶構造は,発見から80年以上が経過しても未解明のままであり,蓄熱技術として近年盛んに研究開発が行なわれるなか正確な構造に基づく材料・プロセス設計や性能評価が困難だった。

研究グループは,TBAB·26H2Oハイドレートの結晶構造を,兵庫県の大型放射光施設SPring-8のBL02B1,BL05XU,BL40B2における単結晶X線回折法を用いて解析した。解析の結果,TBAB·26H2Oは空間群P421 cをもつ正方晶構造であり,そのc軸は従来のTS-I型構造の4倍に相当する約50Åの大きな格子を有していることが明らかになった。

構造解析により,水分子が水素結合によって構成する12面体ケージと14面体ケージからなる複合ケージにTBABが2つ共棲するという,これまでに報告のない新しい配置様式が明らかとなった。さらに,臭素イオン(Br)が水分子の水素結合ネットワークの一部を構成し,ケージ構造の安定化に寄与していることが判明した。

得られた構造モデルは,これまで粉末X線回折実験により観測されていたTBAB·26H2Oの回折パターンと高い一致を示し,これまでの仮説的構造モデルでは説明できなかった回折ピークの整合性が得られた。この研究によって,TBABが高い柔軟性をもってさまざまな水素結合フレームワークに適応することが確認された。

さらに,構造情報に基づき結晶密度および水和数を用いて蓄熱密度を評価した結果,既知のTBAB·38H2Oと比較して同等の空間効率を持つことが示され,実用的な冷熱蓄熱材料としての有効性が改めて確認された。

研究グループは,今回の成果により,水を基盤としたハイドレート材料の構造設計が大きく前進し,今後のCO2削減に貢献する次世代のエネルギー貯蔵技術の進展が期待されるとしている。

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