東京理科大学と高輝度光科学研究センターは,硬X線光電子分光法(HAXPES)により,InGaZnO4(IGZO)単結晶の電子状態を解析し,結晶中の酸素欠陥がIn原子の周囲に偏って存在していることを明らかにした(ニュースリリース)。
IGZOは透明導電性酸化物の一種で,高精細フラットパネルやフレキシブル基板の薄膜トランジスタ(TFT)材料として利用されている。しかし,従来の研究の多くはアモルファスIGZOを対象としており,本質的な電子構造は十分に解明されていなかった。
研究グループは,光フローティングゾーン法により,IGZO単結晶を作製した。酸素欠陥の影響を検討するため,作製した結晶(As-grown試料)に加え,酸素雰囲気下でアニールした結晶(Annealed試料)を準備した。
結晶中の酸素欠陥によって生成された電子キャリアは赤色光を吸収して青色光を透過させるため,結晶は青く見える。そこで,研究グループは単結晶の色の変化を酸素原子が欠陥を埋める指標として用いた。そのため,As-grown試料の青みがかった色が完全に消えて透明になるまで,0.1MPaの酸素圧力下,1000℃でアニールした。
HAXPES実験は,大型放射光施設SPring-8のBL09XUにおいて,入射光エネルギー7.9keVを用いて実施した。内殻HAXPESスペクトルを詳細に解析することで,As-grown試料とAnnealed試料の酸素欠陥の分布を評価した。
その結果,Annealed試料ではIn,Zn,Ga陽イオンの環境が一様であるのに対し,As-grown試料では酸素欠陥に起因する2つの異なる陽イオン環境が存在することが明らかとなった。
また,As-grown試料のIn 3dスペクトルの非対称性が他のスペクトルよりも顕著であることから,酸素欠陥がInO2層に優先的に形成されることが判明した。
価電子帯HAXPESスペクトルの測定結果から,As-grown試料において,伝導帯下端近傍のサブギャップ状態の形成が確認された。一方,Annealed試料では,このサブギャップ状態の形成が確認されなかったことから,酸素欠陥に関連していることが明らかとなった。
また,As-grown試料とAnnealed試料の価電子帯上端近傍のサブギャップ状態が,アモルファス試料と比較して,大幅に抑制されていることがわかった。
研究グループは,さらなる研究の発展により,次世代ディスプレーや透明エレクトロニクスデバイスの性能向上に向けた新たな設計指針が得られることが期待されるとしている。
