EUのプロジェクト「ELENA」(European electro-optic and nonlinear PIC platform based on lithium niobate)は42か月の研究機関を終え,フォトニック集積回路(PIC)向けの欧州製「絶縁体上リチウムナイオベート」(LNOI)基板の開発に成功したと発表した(ニュースリリース)。
これは,薄膜リチウムナイオベート(TFLN)技術において,完全に欧州内で完結するサプライチェーンを確立した画期的な成果だとする。
TFLNは,独自の電気光学・非線形光学・音響光学特性を備えた薄膜構造により,高性能PICを実現する材料プラットフォーム。LNOIウエハーの登場により,リチウムナイオベートの高精度な微細加工が可能になり,指先より小さなサイズに多機能光学素子を統合できるという。
これまで,LNOIはEU域外の単一サプライヤーに供給を依存しており,商業規模でTFLNフォトニックチップを製造できるファウンドリーも存在しなかった。ELENAプロジェクトはこの課題に取り組み,欧州初のLNOIウェハーの商業供給体制を構築し,TFLNチップ製造基盤を整備した。
総額500万ユーロのこのプロジェクトには,基板開発,フォトニック設計,製造,検査,パッケージングといったPICバリューチェーンの10組織が参加。主な成果には,LNOIプラットフォーム向けの初のPDK(プロセス設計キット)と,TFLN技術を研究段階から商用生産へ移行させるためのファウンドリー対応プロセスの確立が含まれる。
AI,データセンター,通信分野における高速・省電力な電気光学チップの需要が急増する中,この成果により,戦略的な半導体分野における欧州の主権が大幅に強化されるとしている。