静岡大学の研究グループは,代表的な半導体材料であるシリコン表面に微細な周期凹凸構造を形成することにより,深紫外(DUV)領域の光を高感度に検出する光センサを開発した(ニュースリリース)。
近年の半導体リソグラフィ技術の進展や,ウイルス検出,炎検知など,紫外光センサの需要が高まってきている。しかし,従来のシリコンフォトダイオードの深紫外光感度は0.1A/W程度と低く,これらの用途への応用のためにはさらなる高感度化が求められている。
この研究では,シリコン表面にサブミクロンスケールの周期的な凹凸構造を形成することにより,表面プラズモン共鳴が励起され,深紫外光に対する感度が飛躍的に向上することを発見した。
従来,表面プラズモン共鳴励起のためには金属を用いることが一般的だが,研究グループはシリコンが深紫外光に対して金属的な光応答を示すことに着目し,シリコン上での表面プラズモン共鳴励起を実証した。
表面プラズモン共鳴励起に伴い励起電子確率が大幅に向上し,光検出効率が凹凸形成前と比較して3倍以上改善することを世界で初めて実証した。この手法はシリコン材料単体で成立しており,構造も単純でありながら高い性能を実現しているとする。
この成果により,深紫外光によるウイルス殺菌の照射モニタリングや,炎検出に基づく火災の早期発見など,衛生・防災分野への応用が期待されるという。さらに,シリコンを用いたこの技術は,既存の半導体製造技術と高い親和性があるため,センサの小型化・集積化・量産が容易であり,医療,環境,防災,半導体産業など,様々な分野での応用展開が見込まれており,今後は実用化に向けた開発が進めるとしている。